LIKE A SHOOTING STAR                     

          ミツオ留学後の世界を描いた、連載ストーリーです。

 

5、恋に落ちて

  

 1、

 

   今日も、清々しい朝がやって来る。

   ミツオは早くから起きだし、出発する準備を整えていた。

   ソフィ「ミツオさん・・・? 今日は早いんですね。」

   しばらくして、ソフィが起きてきた。

   ミツオはインスタントラーメンを食べながら、TVのニュースを見ている。

   ミツオ「連続殺人犯を、捕まえに行くんだよ。遠くへ逃げる前に、ぼくらで何とかしなくちゃいけないからね。」

   ソフィ「そのことなら、知ってますよ。毎日、事件はチェックしていますから。」

   それを聞いて、ミツオは多少、驚いたように振り向いた。

   ミツオ「それにしては、ぼくに何も教えてくれないね。」

   ソフィ「だって、ミツオさん自身がパーマンですもの。わざわざ言わなくても、わかってるでしょう。」

   ・・・・ミツオはうなずいた。

   そして空になったインスタントラーメンを机に置き、パーマンセットをパー着する。

   ミツオ「そろそろ、行くよ。お昼には帰れるといいけど、もしもの時は先に昼食、食べて。」

   ソフィ「はい。それにしても・・・、毎日大変ですね。」

   するとミツオは、おおげさに首を振った。

   ミツオ「自分で決めたことだからね。ぼくにはバードマンより、パーマンのほうが性に合ってるんだ。それに、明日はぼ

       くのパーマン休暇だから、久しぶりにゆっくりできるよ。」

   ソフィ「・・・そうですか。」

   そう言うと、ミツオはPBハウスから出て行った。

   ソフィは彼が見えなくなるまで、空を見上げていた・・・―

   

   ルーシャ「ソフィ、おはよう。」

   突然、声をかけられ、ソフィは正気に戻った。

   ルーシャの姿を確認すると、慌てて笑顔をつくる。

   ソフィ「おはようございます。」

   ルーシャ「窓の外に何かいたの? ぼーっと空を見上げちゃって。」

   ソフィ「・・・・。」

   彼女は間を置いた。ルーシャはソフィの異変に気がつく。

   ルーシャ「ソフィ・・・?」

   ソフィ「・・・ミツオさんは、本当に正義を愛しているんですね。」

   ルーシャ「・・・?」

   ソフィの言いたいことが、よくわからなかった。

   彼女は腕を組み、考える。

   ルーシャ「つまり、何が言いたいの?」

   ソフィ「いえ・・・、ただ素敵だなって思っただけです。」

   ・・・・!

   ルーシャの頭の中で、豆電球がピカッと光り輝いた。

   ルーシャ「そう・・・。つまりソフィは、恋に落ちたのね・・・。ミツオくんを好きになったのね・・・。」

   ソフィ「えぇ!?」

   ルーシャ「そうか、そうなんだ。青春ねぇ・・・。」

   ソフィ「違います! そんなんじゃありません!」

      必死で否定するソフィを無視し、ルーシャは続ける。

   ルーシャ「そういえば、昨日も彼に助けられたものね。それが切っ掛けで?」

   ソフィ「え・・・、それは。」

   昨日からミツオさんのことが、気になって気になって眠れなかった・・・なんて言えない!

   ルーシャ「いいの、いいの。ちゃぁんと、わかってるんだから。あたし、恋って大好き! 応援するわよ!」

   ソフィ「だから、そんな・・・恋とか・・・。そういうハッキリしたものじゃないんですけど。」

   ルーシャ「あの子が素敵〜なんて思うのは、恋に落ちた証拠なの! わからない人ね!」

   ソフィ「どっちが!」

   フンッとそっぽを向く二人。

   ソフィ(恋なんて・・・、まだ経験したこともないのに。)

   

   ― 命の危険を恐れることもなく、わたしを拳銃から守ってくれた彼・・・。

      気になるのは、当たり前じゃないですか。

      胸がドキドキするのも・・・、無意識に視線が彼を追ってしまうのも・・・全て―

      

   ソフィ「もしかして・・・、これが恋?」

   ルーシャ「ようやく、わかったの!?」

   ひっそりとつぶやいたつもりだが、彼女の耳に届いたようだ。ソフィは慌てて口をふさぐ。

   ルーシャ「隠しても遅いわよ。あたしが、全力で応援してあげるからね!」

   ソフィ「・・・・。」

   ソフィはうつむく。そして確信した―

   ソフィ「・・・わかりました。」

   するとルーシャは、満面の笑顔を浮かべた。

 

 2、

 

   ルーシャ「さて・・・、今日はミツオくんのパーマン休暇です。」

   翌日。

   ルーシャの部屋で、ソフィは恋について学ぶことにした・・・いや、強引にここまで連れてこられたのだ。

   ルーシャ「話を聞いてみると、あなたはまだ恋を経験したことがないみたいね。これは、徹底的に教えるしかない

         わ・・・。」

   ソフィ「何をです?」

   ルーシャ「勿論、恋について!」

   ソフィ「・・・・。」

   そんな大事にしてほしくないのに・・・・。ソフィは心の中でつぶやく。

   ルーシャ「あたしは恋のAngelと呼ばれたほど、さまざまな恋愛をサポートしてきたの。だから、ソフィの恋も、絶対に叶

         えてあげるわ!」

   ソフィ「結構です。自分の力でなんとかします。」

   ルーシャ「できない! 未経験なあなたには、不可能!」

   そこまでハッキリ言われると、ムッとする。

   ルーシャ「ここは恋のgoddessである、ルーシャ様にお任せを!」

   ソフィ「Angelじゃなかったんですか?」

   すると彼女は咳払いを一つし、部屋を回り出した。名探偵が謎解きをする時のように・・・。

   ルーシャ「まずは相手に気に入られることが重要です。ミツオくんは単純だから、すぐにその気になるでしょう。

         早速、告白しようではないか!」

   ・・・・。

   ソフィは立ち上がると、部屋を後にした。

   ルーシャ「どうして、逃げるのよぉ!」

  

   その頃、ミツオはロンの部屋にいた。

   親友と一緒に、この休暇を楽しみたいと思ったからだ。

   ロン「オレはパーマン1号だったんだ。2号は、ラミーという女の子だよ。」

   ミツオ「ふぅん。ぼくも1号だったけど、2号はブービーというお猿さんだったよ。」

   ロン「猿って・・・、動物?」

   彼は驚いたようだ。

   バッチを投げて当たったのが、たまたまブービーだったという理由だが・・・。

      ロン「どうしてだろ。何か深ぁ〜い訳があったのかな。」

   ミツオ「さぁ・・・、どうでしょ。」

   するとロンは、一枚の写真を机の引き出しから取り出した。

   パーマンセットをパー着した、女の子が映っている。

   ロン「この子がラミー。そそっかしくて、放っておけない子だったな・・・。」

   ミツオ「へぇ、可愛い子だね。うちのパー子よりも、性格が良さそうだし。」

   ロン「パー子?」

   ミツオはうなずいた。そしてバッグの中から、パー子と星野スミレの写真を出す。

   ミツオ「お転婆で男勝りで、ケンカばかりしてたんだけど。」

   ロン「うわぁ、美人! こんな子と一緒に仕事をしてたなんて、うらやましいよ。」

   ミツオ「でもパー子は、正体を教えてくれなかったんだ。留学直前に、初めて知ったんだけどね。」

   彼は、懐かしそうな顔をしていた。

   あの頃の思い出が、心の奥底から溢れ出てくる。楽しかったあの日々には、二度と戻れない・・・―

   ミツオ「それでも、ぼくに告白してくれたんだ。自分の宝物は、ぼく。須羽ミツ夫だって・・・。」

   ロン「告白!? お前、モテたんだな・・・。」

   ミツオ「まさか、彼女だけだよ。ミツオ自身を好きになってくれた女の子は・・・。」

   ・・・・。

   ロンは顔を伏せた。そして、察知する。

   ロン「そうか・・・。パー子さんは、ミツオにとって本当に大切な存在なんだな。」

   ミツオ「まぁね。でも、ロンもいるでしょ? 大切な人。」

   すると、彼の表情が一変した。ミツオは、驚く。

   ミツオ「変なこと言ったかな・・・。」

   ロン「・・・・。」

   哀しそうな顔・・・・―

   だが、しばらくすると、またいつもの笑顔に戻った。

   ロン「この写真・・・。」

   彼は、一枚の写真を取り出す。それには、6、7歳くらいの男の子が映っていた。

   ロンの小さい頃の写真だろうか?よく似ている。

   ミツオはそれを覗き込む。

   ロン「オレの、お兄ちゃんなんだ。」

   ミツオ「あぁ・・・、よくロンの話に出てくるよね。」

   ロン「・・・優しくて、いつもオレのそばにいてくれたんだ。一緒に遊んで、一緒に笑って・・・。とても仲が良い兄弟として

   近所では有名だった・・・。」

   ミツオは想像する。

   二人が手を取り合って、草原を駆け回っている姿を・・・。仲が良さそうな二人の兄弟を・・・。

   ミツオ「ぼくも、会ってみたいな。ロンのお兄ちゃんに。」

   ロン「・・・・。」

   彼は黙ってしまった。

   ― まただ・・・。

   ミツオは、自分が言ったことを振り返ってみるが・・・・―

    ロン「・・・もう、いないから。」

   ・・・・。

   ミツオ「え?」

   ロン「死んじゃったんだ。オレが4歳の頃、病気で。だから、もう会えない・・・。」

   ミツオは思わず顔を伏せた。

   ミツオ「・・・ゴメン。」

   ロンは黙っていたが、しばらくすると首を横に振った。

   ロン「いいんだ、ミツオが悪いんじゃないから。」

   ミツオ「本当に・・・ゴメン。」

 

   ― ぼく、最低だ・・・。知らなかったとはいえ、絶対に言ってはいけないことを・・・―

 

   ロン「・・・お兄ちゃんとね、約束したことがあるんだ。その約束を果たすためには、バードマンにならなくちゃいけない

       んだよ。」

   

   ― ロンも、流れ星のナッちゃんのように、大勢の人に幸福を与えるんだぞ・・・。

      お兄ちゃんは、いつでも天国から見守ってるよ・・・。

   

  ミツオ「なれるんじゃないかな・・・。」

  彼はつぶやいた。

  ミツオ「いや、絶対になれる! ロンなら、宇宙の平和を守るバードマンになれるよ!」

  ロン「ミツオ・・・。」

  そして、笑顔を浮かべる。

  ロン「ありがとう。」

 

  ルーシャ「ミツオくーん!」

  そのとき、突然部屋のドアが開いた。二人は驚いて振り返る。

  ミツオ「ルーシャ・・・。」

  ルーシャ「ねぇ、ソフィのことを・・・。」

  ソフィ「やめて!」

  すると、今度はソフィが部屋に駆け込んできた。慌てて、ルーシャの口をふさぐ。

  ルーシャ「何するのよぉ!」

  ソフィ「すみまん、お邪魔して。もう、出て行きますから。」

  ルーシャ「待って、まだ話が終わってないわ!」

  暴れるルーシャを抱えて、ソフィは部屋を出て行った。

  呆気にとられる二人・・・。

  ミツオ「・・・何だったの、今のは?」

  ロン「さぁ?」

 

 

  ソフィ「何を、聞こうとしていたんですか!?」

  ルーシャを引っ張って、部屋に連れて帰ったソフィは、軽く息を切らしながら尋ねる。

  しかし、ルーシャはコンピューターを起ち上げて、何やら作業を始めた。

  彼女の声など、届いていない。ソフィは、もう一度、聞き返す。

  ソフィ「何を、聞こうとしていたんですか?」

   ルーシャ「え?」

  ソフィ「とぼけないでください。さっきミツオさんに、聞きかけたことです。」

  ルーシャ「あぁ、あれね・・・。ミツオくんにとって、ソフィはどんな存在かを・・・。」

  ソフィ「強引過ぎますよ!」

  ソフィは必死に反論しているが、ルーシャは振り向こうともしない。仕方なく、ソフィは彼女のそばに駆け寄り・・・。

  ソフィ「人の話を聞くときは・・・。」

  ルーシャ「あった、あった! これよ!」

  いきなりルーシャが、立ち上がる。ソフィは驚いて、腰を落とした。

  ルーシャ「『月夜のイルミネーション。今宵は恋人とご一緒に素敵なお時間を。』」

  ソフィ「・・・・?」

  ルーシャ「今夜、行きましょう!ミツオくんが担当している、アレイス大陸よ。」

  ・・・・。

  彼女は静かに起き上がると、睨みをきかせて彼女に尋ねる。

  ソフィ「何が目的ですか?」  

  ルーシャ「いやぁだ、あたしを何だと思ってるのよ!恋のAngelよ。任せておきなさい!」

    ソフィの天才的頭脳は、どうしたら、この恋のdevilの野望を打ち砕けるか計算していたが、逃げ道は見つからなかった。

  

  ミツオ「イルミネーション?」

  彼は聞き返す。ルーシャは大きくうなずいた。

  ルーシャ「勿論、行くでしょう?」

  ミツオ「でも・・・、外は寒いし。」

  ルーシャ「も・ち・ろ・ん、行くんでしょう?」

  今度は『勿論』の部分を妙に強調して、尋ねる。ミツオの頬に冷や汗がつたう。

  ミツオ「何でそんなに・・・?」

  ロン「オレは行くぜ!当然、食べ物は売ってるんだろうな?」

  すると、ルーシャは真顔で振り向いた。

  ルーシャ「あぁ・・・、まぁロンは来なくてもいいけど。暇つぶしには、なるわね。」

  ロン「・・・それ、どういう意味?」

  しかし彼女はミツオの方に顔を向け直すと、再び彼に尋ねる。

  ルーシャ「行かないとは、言わせないからね?」

  ミツオ「・・・。」

  少々、疑問を抱くミツオだが、とりあえず刃向かうことは許されない。渋々とうなずいた。

  ルーシャ「さすが、ミツオくんね。さぁ、良い時間になってきたし、準備が整い次第、出発よ!」

  オー・・・。

  中央に熱く燃え上がる炎。その炎を囲んで、灰のように白けた三人の姿があった。

 

3、

  

  暗闇を灯す、力強い小さな光・・・―

  操られているように集まっていく、人々の姿・・・―

  

  見る人々に感動を与える、イルミネーションは芸術そのもの・・・―

 

  申し分の無い、ロマンの世界・・・だったのだが。

  ロン「肉まんにするべきか、あんまんにするべきか・・・。なぁ、ミツオ。お前はどっち派?」

  ミツオ「そうだねぇ。やっぱり肉まんかな。」

  バシッ!

  ルーシャは二人の頭を、持っていたバッグで叩いた。

  ロン「ったぁ〜! 何するんだよ、ルーシャ!」

  ルーシャ「全く、コレだから男は!折角の雰囲気をぶち壊しにしないでよね!」

  しばらくにらみ合う二人。最初に顔を背けたのはロンだった。

  ロン「オレは旨いものを食いに、ここまで来たのっ。何をしようが、勝手だろう。」

  ルーシャ「まぁ、いいけどね・・・。とりあえず、あそこまで行きましょう。」

  彼女が指をさした先には、今回のイベントの目玉である、ライトツリーがあった。

  しかしその周りには、うんざりするほど、多くの人が集っている。

 

  イルミネーションの会場は、アレイス大陸のとある公園だ。

  この辺りでは一番面積が大きく、ライトを掛けるのに適した樹木が数多く植えてあり、近くに大駐車場もある。

  ライトツリーは、公園の中央にある小高い丘の上に立っている。

  

  ロン「何で、わざわざ人混みの中へ・・・。嫌だよ、オレ。」

  ルーシャ「いいから!ライトツリーを見なくちゃ、ここまで来た意味がないってものよ。」

  そう言うと、彼女はソフィのミツオの手をつかんで小走りをする。

  ロンは肩を落とすと、仕方なく後を追った。

  ライトツリーは高いため、公園のどの位置にいても先の方なら見ることができる。

  だが、近づくごとにツリーをまとったイルミネーションは迫力を増し、人々の心に刺激を与える。

  4人は人混みを押しのけ、前進していった。

  ミツオ「ねぇ、ルーシャ。どこまで行くの?」

  ミツオが尋ねる。

  ルーシャ「まぁ・・・、ここでいいか。」

  彼女は一度立ち止まって、辺りを見回した。人の波にのみ込まれてしまったようだ。

  こんな中で離れたら、簡単には仲間を見つけられない。

  前へ進んでいくうちに、ツリーの全体を見ることが出来る位置までたどり着いた。

  ソフィ「見てください。これがライトツリーですね。」

  4人は顔を上げた。

  光り輝くライトツリー・・・。七色のライトが、絶え間なく闇夜を照らしている。

  イベントの目玉に相応しい出来と言えるであろう。

  ミツオ「うわ〜! やっぱり近くで見ると迫力が違うねぇ〜。」

  ルーシャ「そうね。・・・あっ、ミツオくん。ズボンにゴミがついてるわよ。」

  彼女は、ミツオのズボンに手を出した。

  ルーシャ「とれたわ。」

  ミツオ「ありがと。暗いのによく見えるね。」

  すると彼女は慌てたように、言う。

  ルーシャ「さっきから気になっていたのよ。もっと、早く言えば良かったかな。」

  そして肩をすくめると、舌を出して笑った。

  

  ルーシャ「さて・・・。」

  彼女は辺りの様子を確認すると、ツリーを見物していたロンの腕をつかんだ。

  ロン「なんだよ。」

  ルーシャ「肉まん食べたいんでしょう?買いにいきましょうよ。」

  ミツオ「あ、ぼくも!」

  するとルーシャは、左手を彼の顔の前に出した。

  ルーシャ「いいわ。あたしが買ってあげるから。ミツオくんは、ソフィと一緒にここで待ってて。」

  ロン「オレの分も、ルーシャが買って来てくれればいいだろ。」

  ルーシャ「一人だけ迷子になったら、心細いでしょ。」

  彼女は笑顔をつくっているが、目が笑っていない。ロンは、うなずくしかなかった。

  ルーシャ「さ、行きましょ。」

  二人は屋台の方へ消えていった。残されたミツオとソフィは、顔を見合わせる。

  ミツオ「どうする?」

  ソフィ「待ってましょう。すぐに戻って来るでしょうから。」

  ソフィはそれだけ言うと、顔を伏せた。

  ― 今ここには、二人だけ・・・。わたしとミツオくんだけ・・・。

  周りに人は大勢いるのだが、彼女の目にはミツオだけしか見えていなかった。

  心臓が高鳴る。頬が熱くなる。

  だが、ソフィの顔の赤みは真っ暗な中ではわからない・・・―

 

  ロン「さ、ミツオ達のところへ戻ろうぜ。」

  肉まんを買い終えた二人。しかしルーシャは、首を振り、彼の腕を放さない。

  ルーシャ「もう二人には会えないわ。あたし達だけで、楽しみましょ。」

  ・・・・。

  ロン「・・・理由は、聞かない方がいいだろ?」

  ルーシャ「わかってるじゃないの。」

  彼女は、ロンに向かって笑いかけた。そして、バックの中に入れた、ミツオのパーマンセットを確認する。

  

  ソフィ「帰ってきませんね・・・。」

  ライトツリーの前で、ロンとルーシャを待っていた二人は、うなずきあった。

  ミツオ「そうだね。」

  ソフィ「何かあったんでしょうか。もう30分も経つのに・・・。」

  ミツオ「肉まんを買うくらいなら、10分もあれば十分なのにねぇ。迷子になったのかもしれない。」

  ソフィ「いえ・・・、もしかして。」

  ― 嫌な予感がする・・・・。

  ソフィは辺りを見渡した。やはり、二人の姿は無い。

  ― やはりコレは・・・、彼女の・・・。

  ソフィ(ルーシャの作戦なんでしょうか?)

  ロンを誘い出し、二人で消える。わたしはミツオくんと二人きりになる。

  

  ― 楽しくデートしてね、ソフィ!

 

  ソフィ(ルーシャなら、やりかねないでしょうね・・・。)

  ミツオ「仕方ないから、パーマンになって空から探そう。って・・・アレ?おかしいな・・・。」

  ソフィ「どうかしましたか?」

  ミツオ「パーマンセットがない・・・。」

  ・・・・。

  しばらく沈黙の時間が流れる。

  ソフィ「大変じゃないですか・・・。いつ、なくしたんですか?」

  ミツオ「さっきまで、確かにあったんだよ。ソフィは、持ってないの?」

  ソフィ「残念ですが・・・。」

  出発するときに、ミツオ以外はパーマンセットをPBハウスに置いてきたのだ。

  ミツオは、仲間から呼び出しがかかるといけないので持ってきた。

  これは全て、ルーシャの仕業だとソフィは確信する。

  ソフィ「空から探せないとなると・・・、どうしましょうか。」

  ミツオ「うん・・・。」

  

  ― ファイトよ、ソフィ! 折角のチャンス、生かさなくちゃ勿体無いわ!

  

  ソフィの頭の中では、ルーシャの声が浮かんで消えない。

  

  チャンス、チャンス、チャンス・・・―

 

  山びこのように響く「チャンス」の言葉。ソフィは迷っていた。

  少し強引なところもあるが、ルーシャは自分のためにやってくれている。

  本気で、自分の恋を応援してくれているのだ・・・。ここは応えるべきではないだろうか。

  ソフィ「ミツオさん。」

  彼は振り向いた。ソフィは胸を押さえると、軽く深呼吸をした。

  ソフィ「このまま二人を待っているのも、ただ時間が経過するだけですし。宜しければ、わたしと一緒にまわりませんか?」

  言葉が震えないように、ソフィは手を強く握った。

  目をそらさないように、恥ずかしさをこらえる。

   ・・・・。

  ミツオ「いいよ。」

  その言葉を聞いた瞬間、ソフィの全身の力がスッと抜けた。案外、あっさりと答えられたが・・・。

  ソフィ「では・・・、行きましょうか。」

  ミツオ「うん。」

  すると、ミツオはソフィの手を軽く握った。ドキッとするソフィ。

  ミツオ「離れないように、手をつないだほうがいいんじゃないかな。」

  ソフィ「そ、そうですね。はい・・・。」

  二人はライトツアーを離れて、丘の下に降りた。周りからは、微笑ましいカップルに見えるのだろう。

 

 

  ミツオとソフィは、光の中を歩いた。

  ミツオはイルミネーションを楽しんでいる(?)が、ソフィにはそれどころじゃない。

  ソフィ(恋って不思議・・・。こんなに胸がドキドキするものなんですか・・・?)

  今まで4年間、彼と付き合ってきた。

  その間に、彼の多様な表情を見てきた。笑ったり、怒ったり、悲しんだり・・・―

  だが、特別な感情を抱いたことはなかった。

  大切な友達の一人。ただ、それだけだった。

  なのに、どうして突然好きになってしまったのか。きっと、眠っていた感情が、目を覚ましたのだろう。

  あの時、あの瞬間に・・・。

  ミツオ「ソフィ。」

  突然、彼が話しかけた。ソフィは応える。

  ソフィ「・・・・はい。」

  ミツオ「何か食べる?ぼく、フランクフルトが欲しいんだけど。」

  ソフィ「あ、わたしはいいです。お金、持ってきてないので。」

  ミツオ「そうなの?なら、おごろうか。※200円くらいなら。」                  ※日本円に直して表しています。

  しかし、ソフィは慌てて拒否した。

  ソフィ「いいですよ、悪いですし。」

  ミツオ「遠慮しないでよ。フランクフルトでいいよね?ソフィもついて来て。」

  ソフィ「・・・・。」

  彼が勝手に進んでいくので、ソフィも屋台に向かって歩いた。

  フランクフルト屋の前まで来ると、ミツオは注文する。

  ミツオ「二つ。」

  「はい、はい。400円になりますね。」

  店番の男性は笑顔をつくると、フランクフルトを二つ取って、パックに入れた。

  ソフィ「あの、ミツオさん・・・。」

  男性がケチャップをかけるのを見て、ソフィが言った。

  ミツオ「もう頼んじゃったよ。もしかして、フランクフルト嫌いだった?」

  ソフィ「いえ、そんなことはないです。PBハウスに戻ったら、お金お返ししますね。」

  ミツオ「いいって言ってるのに〜。月に決められたお小遣いとは言え、バード星から送られてくるものだしね。」

  彼は男性からパックを受け取り、勘定を払うと、ソフィに一本フランクフルトを渡した。

  ソフィ「ありがとうございます。」

  ミツオ「どういたしまして。」

  ミツオの自然な笑顔が、ソフィには嬉しかった。

 

4、

 

  既に時計は9時を回っていたので、4人はそれぞれPBハウスに帰ってきた。

  イルミネーションは、9時には終わるのだ。

  ミツオ「ロン、いったいどこに行ってたんだよ。」

  ロン「それがさ、ルーシャに・・・イテテテテ!」

  言いかけたロンの頬を、ルーシャが思いっ切り引っ張った。

  ルーシャ「あたしたち、迷子になってたのよ。そっちは、どうだった?」

  ミツオ「うん、楽しかったよ。」

  それを聞いて、ルーシャは安心した。すると、ソフィがルーシャの肩をたたいた。

  ソフィ「ちょっと、来てくれますか?」

  

  ソフィの部屋で。

  ルーシャはニコニコと爽やかな笑顔を浮かべている。

  ルーシャ「作戦は大成功だったでしょう?」

  ソフィ「えぇ、そうですね。ありがとうございました。」

  ・・・・。

  ルーシャは驚いたようだ。しばらく、ソフィを見つめている。

  ルーシャ「・・・怒られるかと思ったのに。どうしたの?」

  ソフィ「確かに、ちょっとわざとらしい作戦ですけど、ミツオさんは鈍感で気づかないでしょうし。わたしも、とても楽しめまし

  たし。お礼を言うべきだと思ったんですけど・・・。」

  ルーシャ「ソフィ・・・。」

  すると、ルーシャは唐突にソフィに抱きついた。

  ソフィ「ルッ・・・!」

  ルーシャ「良かったわぁ〜。これからも応援するからね!絶対に、ミツオくんと両想いにしてみせるからね!」

  ソフィ「ルーシャったら・・・。」

  ソフィは素直に嬉しかった。

  ― 怒られるとわかっていて、作戦を実行したんですね。

  こんな冷たい言葉なんて、喜ぶ彼女の前では、とても言えなかった。

 

 

  ★

 

 

 

  「何、パーマンを辞めるって。・・・本気かい。」

 

  「仕方ないんです。今度の仕事を引き受けた以上、パーマンの活動はもう出来ないと思います。」

  

  「それで、後悔はないんだね。」

 

  「た、たぶん・・・。」

 

  「よし。決心したのなら、あたしは何も言わない。残念だな。この銃はキミのパーマンであった部分の記憶を全て消して

   しまう。残酷なようだが、パーマンの秘密を守るためには仕方ないのだ。いくぞ!」

 

 

  彼女は静かに目を閉じた。

  銃の引き金が、ゆっくりと引かれた。

 

 

 

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