LIKE A SHOOTING STAR                     

          ミツオ留学後の世界を描いた、連載ストーリーです。

 

 4、命のDanger

  

 1、

 

   ミツオ「と・・・言うわけで、新しく仲間に入りました。パーマン3号のミツオです。よろしく!」

   青いマスク、赤いマント・・・―

         まるでキャンバスに描いたような、爽やかな青空の上で。

   かつて地球で活躍していた、パーマン1号の姿がそこにあった。

   ミネルダでミツオが任命した仲間達が、彼の目の前にいる。

   ネオ「ぼくはネオ、パーマン1号です。よろしく。」

   マリンカ「あたしはマリンカよ。パーマン2号。」

   二人は3号に右手を出した。彼は両手で握手をする。

   ミツオ「よろしく。」

   そして、さわやかな笑顔を浮かべた。

   ネオ「パーマンって大変な仕事だけど、とても楽しいよ。人命を救うことができるし、やりがいのある仕事なんだ。わか

       らないことは、何でも聞いてね。」

   ミツオ「あ、うん・・・。」

   ― よぉーく、わかっているけどね。と、言うかネオも一応はそんな風に感じていたんだ。

   心の中で、そっとつぶやく。

   マリンカ「でも正体を明かせないし、色々と苦労も多いのよね。特に、あのバードマンという人。」

   バードマン・・・。

   ミツオ(ぼくのこと?)

   マリンカ「初対面はどうだった? やっぱり、詳しいことはネオに聞けって言われたの?」

   ミツオ「えっ、いや・・・。」

   マリンカ「そう? あたしなんか、面倒くさいからあとは1号に説明してもらえ〜なんて言われたのよ。全く、あんなどう

         しようもない人があたし達パーマンの指導者なんて。」

   ・・・・。

   ネオ「ぼくも、その時は正直ビックリしたよ。」

   ミツオ「え、えっと・・・バードマンはキミを信頼してだね・・・!」

   マリンカ「そうそう、この前もコピーロボットを渡すの忘れてた〜なんて、部屋に飛び込んできたのよ。そんな物がある

         とは知らなかったあたしは、家族にどれだけ叱られたことか・・・。」

   ・・・・。

   ミツオは何も言えなくなる。

   ネオ「そういえば、ミツオくんの声って何だかバードマンに似ているような気もするけど・・・。」

   ミツオ「え、えぇっ!ま、まさか!気のせいでしょ。」

   マリンカ「そうよ、ネオ。そんな事言ったら、ミツオくんに失礼だわ。」

   すでに、十分失礼なこと言っていますけど。

   ネオ「とにかく、バードマンには頼らず、ぼくらだけの力でやっていこうね!」

   マリンカ「オーッ!」

   ミツオ「オ、オー・・・。」

   ミツオも、弱々しく右手を挙げた。太陽の光が照って、拳が眩しく光った。

 

   そのとき。

   突然、消防車のサイレンがけたたましく鳴り響いた。

   3人は周りを見渡す。

   マリンカ「あそこ・・・!」

   マリンカが西を指さした。もうもうと黒い煙が、立ち上っている。

   そうとう大きな火災のようだ。

   ミツオ「大変だ、パーマン出動!」

   パーマン達は現場へ向かった。見ると、隣り合った3つの一軒家が激しく燃えている。中央の家から火災が発生し、両隣に

   燃え移ったという感じだろうか。

   住宅地で、周りには大勢の人々が集まっていた。

   ネオ「狭い道だから、消防車が入れないんだ。このままじゃ、火が広がって・・・・。」

   多くの家が、全焼してしまう・・・。

   マリンカ「どうしよう!」

   ミツオ「決まってるじゃないか。ネオ、マリンカ、バスタブを持ってきて!」

   ネオ「え?」

   ミツオ「お風呂の湯をかけるんだ! 早く!」

   マリンカ「でも、あたしの家、遠いのよ。」

   ミツオ「近所の家から、借りてくるの!」

   二人はうなずくと、一目散に飛んでいった。

   地球で火事が起きたとき、よくやっていたことだ。ミツオも近くの家に飛び込む。

   ミツオ「すみません、ちょっとの間だけお借りします。火が消えたら、すぐ返しに来ますから!」

   ミツオはバスタブを2つ抱えると、現場に戻った。

   そこには、もうネオとマリンカがいる。

   3人は燃えている住宅の真上まで来て、それぞれ湯を流した。

   マリンカ「重い〜・・・。」

   ミツオ「頑張れ! 火が消えるまで・・・。」

   すると、目の前に巨大な滝が見えた。集まっていた人々が驚きの声を上げる。

   しばらくして水がなくなると、すっかり火の勢いはおさまっていた・・・・。

   ミツオ「成功だ!」

   3軒の家は全焼してしまったが、これ以上広がるのは防いだ。後のニュースで知ったが、幸いにも死亡者は出なかったようだ。

   ミツオは汗を拭き取る。

   ミツオ「よかった・・・。」

   マリンカ「ミツオくん、すごいわ! あたし、尊敬しちゃう。」

   ミツオ「いや、そんなことないよ。」

   仲間から尊敬されたのは、初めてだ。

   自分は今、地球でいうパーヤンの立場だろうか・・・・。ミツオは照れ笑いをする。

   ネオ「キミが仲間に入ってくれてよかったよ。頼りにしてるね。」

   ミツオ「ハハハ! たいしたことないさ!」

   ミツオは味わったことのない快感に、胸が弾んでいた。

 

  2、

 

   ミツオ「ただいまー・・・。」

   PBハウス。

   ミツオが疲れ切って帰ってきた。もう23時。

   4時間も休憩なしで、飛び回っていたことになる。

   次から次にと事件が起こり、ミツオはそのたびにリーダーシップをとって働いていた。

   ロン「おかえり、遅かったな。」

   真っ先に彼を迎えてくれたのは、ロンだった。

   リビングのソファで横になっていた、ミツオの顔を覗き込む。

   ミツオ「飲み物・・・、何かちょうだい。」

   ロン「オッケー! 今、何もないから水で我慢しろよ。」

   ・・・・えええ。

   ミツオは抱えていたクッションを、さらに強く抱き込んだ。

   ロン「はい、どうぞ。」

   ミツオ「・・・ありがと。」

   冷たい水を流し込み、ミツオはため息をこぼす。

   ロン「だいぶ、疲れてるみたいだな。」

   ミツオ「二人とも、何にも知らないんだ。パータッチとか、バッチが酸素ボンベになってることとか。」

   ロン「仕方ないよ。まだパーマンになって、間もないんだから。だいたい、最初に教えなかったミツオが悪い。」

   ミツオ「・・・確かに。」

   尊敬されるのは嬉しいが、逆に頼りにされ過ぎて困る。

   彼は空になったコップを、机の上に置いた。

   ミツオ「そういえば、ルーシャとソフィはどこに行ったの? 姿が見あたらないようだけど・・・。」

   ロン「買い物さ。見ての通り、冷蔵庫にはなぁーんにもないから。」

   ミツオ「えぇ! 今、夜の11時だぜ!」

   ロン「時差だよ、オリーブでは夕方らしいんだ。」

   納得するミツオ。小さなミネルダだ、二人でパータッチすれば、そう時間はかからないだろう。

   ロン「今日はもう寝るの?」

   ミツオ「う〜ん、そうしたいな。疲れたし。」

   その様子を見て、ロンは窓の外を覗いた。今日は・・・。

   ロン「なぁ、知ってるか? 今日は星がキレイに見えるんだってさ。」

   ミツオ「ふーん、そう。」

   ロン「・・・・。」

   あきれたような目つきで、彼を見つめる。

   ロン「オレが何を言いたいか、わからない?」

   ミツオ「え?」

   ロン「今日は星がキレイに見えるから、屋上まで行って観察しようよって。」

   ミツオ「いってらっしゃい。」

   ロン「ミツオも一緒に行くの!」

   ロンは寝そべっていたミツオの腕をつかむと、強引に屋上へ連れ出した。

   ミツオ「痛い、痛い! そんなに強く引っ張ると痛いよ!」

   彼の悲痛な叫びを無視して、ロンは外に出た。そして、空を見上げる。

   ロン「ほら、こんなにキレイ・・・。」

   ミツ夫はロンの腕を振り払う。そして、ふと顔を上げた。

   ミツオ「・・・・これ、本物の星空?」

   自分たちの上には、今まで見たこともない美しい星空が広がっていた。

   まるで、絵本の中に入ったような・・・。夢の世界のような・・・。

   思わずうっとりと見入ってしまう、そんな不思議な輝きを放つ星達の姿があったのだ。

   ロン「すごいだろう。ミネルダの星空って、無数にある惑星の中でも特にキレイに見えるんだってさ。」

   ミツオ「・・・・。」

   地球ではとても想像できない。地球温暖化、co2の増加、森林破壊・・・。

   そんなもの、ミネルダでは一切存在しないのかもしれない・・・。

   ミツオ「本当に・・・、すごいね。」

   上を見すぎて首が痛くなり、二人は腰を下ろした。

   ミツオ「地球は見えるかな。」

   ロン「さぁ・・・架空宇宙から見えるのかな。でも、宇宙のどこかで必ず光り輝いてるんだ。」

      どの星よりも美しく。

 

   

   ロン「ところでさ、ミツオも偉いよな。またパーマンに戻ろうと考えるなんて。」

   突然話題をかえる。ミツオは首を振った。

   ミツオ「偉くもなんともないよ。ただね・・・、バードマンになっているよりも、仲間と励まし合いながら悪と戦っていく、

       パーマンのほうが、ぼくの夢に近いと思ってね。」

   ロン「夢?」

   ミツオ「そう。宇宙中の人々が幸せに暮らせる、お手伝いができたらいいなって。」

   ・・・・。

   ロン「随分と規模が大きい夢だな。」

   ミツオ「あ、バカにした! そんなことできるわけないって、顔したな!」

   ロン「まさか! ミツオなら出来るよ、必ず!」

   ミツオはロンの瞳を見つめる。

   真剣に言ってくれている・・・、そんな瞳だ。

   ミツオ「本当に?」

   ロン「勿論、親友に嘘はつけない。」

   彼らは軽く笑いあう。そして、また星空を見上げた。

   ミツオ「いつか立派なバードマンになって、宇宙中の星を平和に満たしたい。そのためには、いろんな星に行って、い

        ろんな正義を知って、生物が生存する全ての惑星にパーマンを置けたらいいなって思うんだ。」

   ロン「そっか・・・。」

   するとロンは、考え込むように腕を組んだ。

   ミツオ「どうかした?」

   ロン「いや、ちょっと。・・・・そうだな、ミツオには話してもいいかな。」

   ミツオ「え?」

   ロン「流れ星のナッちゃんだよ!」

   ミツオはますます、わからなくなる。

   ロン「そういう絵本があったんだ。今、取ってくるよ。」

   そう言うと、ロンは勢いよく階段を駆け下りた。ドーンと、人間が転げ落ちたような音がする。

   ミツオ「急いでるんだね・・・。」

   しばらくして、彼は一冊の本を持って帰ってきた。

   ロン「これ、これ。」

   ミツオはそれを覗き込む。表紙には☆の絵が印刷されていた。

   顔と手足がある。周りには、その☆を囲んだ大勢の人々の笑顔が描かれていた。

   ロンはページをめくる。園児が見るような、子供向けの絵本だ。

   ロン「あるところに、流れ星のナッちゃんがいた。ナッちゃんは宇宙を旅して、人類が住む惑星を見つけると、幸福の石

      をその星の住人達に託していったんだ。幸福の石は、人々に幸せを与えた・・・こんな話。」

   子供達の好奇心をくすぐらせる・・・、夢で溢れたストーリーだ。

   ロン「お兄ちゃんが、小さい頃にくれた絵本なんだ。その頃のオレにとって、これほど面白いと感じた話はなかった。大

      きくなったら、ナッちゃんになる!って言い張っていたっけ。」

   ロンは遠くを見るような瞳をしていた。

   ミツオ「でも、何か関係があるの?」

   ロン「わからない? ミツオが言ってることと、そっくりじゃないか。」

   言われて気がついた。確かに、似ている。

   ロン「これはオレの夢でもあるんだ。いつかはバードマンになって、大勢の人々の平和を守れる・・・流れ星のようになりたいってね。」

   ミツオ「そうか・・・、流れ星のようにか。」

   二人は空を見上げる。ちょうどそのとき、星が流れた。

   眩しい輝きを放ちながら・・・―

   ミツオ(いつかなりたい。流れ星のナッちゃんのように・・・。)

   それは絵本の中の話だが、現実に存在したらなんて素敵なのだろう。

   二人は手を取り合った。

   ミツオ「二人でなろう。幸福を運ぶ、流れ星に・・・。」

   ロン「流れ星のように・・・。」

 

 3、

 

   ― ビビビビビ・・・・

   ミツオ「ベルだ!」

   翌朝。

   ミツオはベルの音に気がつき、ベッドから飛び起きる―いつものパターンだ。

   しかし、まだ5時。

   ミツオ「おかしいな、まだ寝てても大丈夫な時間だけど。あ、パーマンバッチか。」

   彼はバッチをポケットから取り出して、スイッチを入れた。

   ミツオ「こちら1・・・3号。何か事件かい?」

   ネオ『銀行強盗らしいんだ。大急ぎで、来てよ。』

   名乗らなかったが、口調からしてネオらしい。

   ミツオ「ネオ、バッチで通信するときは最初に名前を言わなくちゃ駄目だよ。」

   ネオ「そんなこと言ってる場合じゃないよ。早く。」

   逆に注意されたミツオは、渋々とパーマンセットを取り出してパー着した。

   ミツオ「こんな時間に銀行強盗だなんて、面倒くさいな。」

   しかし、自分が選んだ道。文句は言えない。

   ミツオはミネルダを目指して飛び立った。

 

   ○星銀行。

   まだ明け方のため、街中でも人通りがない。時々、トラックやタクシーが通る程度だ。

   現場にはもうネオとマリンカの姿がある。

   マリンカ「遅かったじゃない。」

   ミツオ「無茶言わないでよ。キミたちのように、家がすぐ近くにあるわけじゃないんだから。」

   ネオ「いったい、どこに住んでるの?」

   すると、銀行の奥から物音がした。まだ犯人は中にいるようだ。

   ミツオは二人に向かって人差し指を立てると、ゆっくり中に進んだ。

   マリンカ「犯人に見つからないかしら。」

   ミツオ「静かに! 聞こえたら、どうするんだよ。・・・・わぁ!」

   ネオとマリンカが、ミツオに向かって人差し指を立てる。

   ミツオ「だって、人が・・・!」

   彼の後ろについていたネオとマリンカは、おそるおそる前を覗き込んだ。

   マリンカ「キャッ!」

   入り口のそばで、五人ほど警備員が倒れているのだ。

   ネオ「死んでるの?」

   ミツオ「違うね。睡眠薬か何かで、眠らされてるだけだよ。」

   皆、呼吸をしている。命に別状はないようだ。

   マリンカ「驚いたわ。さ、犯人を捜しましょう。」

   三人は歩き始める。

   ミツオ「あ・・・。」

   金庫の方に気配を感じた。三人は音を立てないように、奥の方へと歩いて行く。

   よく耳をすますと、かすかに声が聞こえてきた。

   

   これだけあれば、一生遊んで暮らせるな。

   取るだけ取ったら、早くずらかろう。もうすぐ、警備員交代の時刻だからな。次のヤツらが、やってくるぜ。

 

   声は、金庫の中から聞こえてくる。

   三人は見つからないように、廊下の壁に背中をくっつけた。

   この廊下の奥の角を曲がったところが、金庫なのだ。

   ミツオ「どうして、警察が捕まえに来ないんだろ。防犯カメラが作動しているはずなのに。」

   ネオ「もしかしたら、こいつらが防犯システムを解除したんじゃないかな。」

   ネオが言う。

   マリンカ「どうやって?」

   ネオ「前に、誰かから聞いたことだけど、銀行の警備員は防犯システムを解除する何とかっていうキーを持っているん

       だって。眠らせた時に、奪ったんだと思うよ。」

   ミツオ「手ぬるい警備だなぁ。簡単に強盗が出来ちゃうじゃない。」

   ネオ「そうかな。睡眠薬なんて、誰にでも作れるものじゃないと思うけど。」

   ミネルダは、地球よりも科学の発達が遅れているようだ。

   ネオ「どうやっつける?」

   ミツオ「スキを見るしかないな。油断した、そのときに・・・。」

   マリンカ「え〜、いつ頃帰れるかわかったもんじゃないわ。明日は、朝早くから友達と出かけるのに。」

   「そんな我が儘を言っている場合じゃない!」

   ミツオとネオは、マリンカに注意する。

   ミツオ「ぼくらはパーマンだよ。平和が第一!」

   マリンカ「だって、明日でアイスクリーム半額サービスが終わっちゃうのよ!」

   ネオ「シッ! そんなに騒ぐと・・・。」

 

   犯人「誰だ!」

 

   金庫のほうから、男の声が聞こえた。三人は慌てて、口をふさぐ。

   犯人2「どうした?」

   犯人1「誰かいるようだ。捜せ!」

   二人の犯人が、銀行内を駆け回る。

   ネオ「どうしよう!」

   ミツオ「とりあえず、外に出よう。窓はない?」

   三人は見つからないように声をひそませ、脱出できるようなところを探す。

   犯人は銃を持っているので、まともに戦ったらこっちがやられるのだ。

   ミツオ「とりあえず、フロントに戻らなくちゃ。でも、犯人が―。」

   

   マリンカ「キャッー!」

 

   突然後ろで、マリンカの叫び声がした。二人は振り返る。

   犯人1「こいつの命がおしくば、おとなしくしろ。」

   彼女は犯人に腕をつかまれ、マスクに銃をあてられていた。

   ミツオの頬に、冷や汗が流れる。

   犯人1「お前ら、最近噂の高いパーマンじゃねぇか。動くなよ、動いたらこいつの命はないからな。」

   マリンカ「うっ・・・・。」

   ― どうする、どうすればいい・・・・。

   ミツオはバッチのスイッチを入れた。

   ミツオ(ソフィ、知恵を貸してくれ!)

   カチャッ―

   そのとき、ミツオのマスクに何かがあたった。振り向こうとするが・・・、

   犯人2「動くな、こいつが火を噴くぜ。」

   驚いて顔を戻す。どうやら自分にも、銃口が向けられているようだ。

   犯人1「全く、とんでもないヤツらだ。どうする?」

   犯人2「始末するしかないだろ。俺らの顔を覚えられたんだからな・・・―。」

   三人の心臓は、爆発しそうなくらい高鳴っていた。

 

   ソフィ「こちら、ソフィ。ミツオさん、応答願います。」

   ・・・・。

   返事がない。ソフィはあきらめて、バッチをポケットにしまった。

   ルーシャ「どうかしたの?」

   ソフィ「ミツオさんからの通信です。でも、応えてくれないんですよ。」

   話を聞いたルーシャは、バッチを取り出してミツオにつないだ。

   ルーシャ「ミツオくん? 何かあったの?」

   ・・・・。

   ルーシャ「おかしいわね・・・。」

   スイッチを切ろうとしたとき、バッチから声が聞こえた。

   ルーシャ「ミツオくん?」

   『とりあえず、この重い金を運んでもらってからにしようか。こいつらなら、銀行にある金、全てを運べそうだからな。』

   『さぁ、早く動け。命がおしくばな。』

   ルーシャ「え・・・。」

   この声、明らかにミツオではない。ルーシャは聞き返した。

   ルーシャ「どうなってるの、ミツオくん?」

   ・・・・。

   ミツオ『シーッ、声を潜ませて。犯人に聞こえたら、ぼくの命はないよ・・・。』

   その声を聞いて、ルーシャはひとまず安心した。

   ルーシャ「よかった、無事だったの。今、どこ?」

   ミツオ『○星銀行・・・、早く来て。』

   それだけ言うと、ミツオはスイッチを切った。

   ソフィはルーシャに向かってうなずくと、パーマンセットをパー着する。

   ソフィ「ロンを呼んできてください。PB、緊急出動です!」

 

 4、

 

  犯人1「さぁ、早く車に運ぶんだ。」

  ミツオ達は犯人の命令により、金庫から取り出した金を袋に入れ、運び出していた。

  銀行の外に止まっている、犯人の自動車に積み込むのだ。

  ミツオには常に銃口が向けられていて、他の二人も手が出せない。おとなしく、言うことを聞くしかないのだ。

 

  ― このままじゃ、大金と共に逃げられちゃうよ!

 

  絶体絶命・・・そのとき。

  ― ビビビビビビ!

  突然、警報ベルが鳴り出したのだ。防犯装置は作動していないはずなのに・・・。

  ミツオ(いや、違う・・・コレ、パーマンバッチだ。)

  犯人1「何だ!?」

  ロン「やーい、犯人さん! こっち、こっち。」

  全員、上を見上げた。緑のパーマンマスクを被った、一人の少年がいる。

  ミツオ「ロン!」

  ロン「もうすぐ警察が来るぜ。早く、ミツオ達を解放するんだ。」

  犯人1「お前は・・・。」

  すると、銃の狙いがミツオからそれた。そのすきを狙って、彼は蹴りを入れる。

  犯人は持っていた拳銃を床に落とした。ロンが、それをサッと拾い上げる。

  マリンカ「やったわ!」

  犯人1「クソッ! おい、待て!」

  犯人はロンのもとへと走っていく。ミツオはしょっていた金袋をおろした。

  ミツオ「よかった・・・・、助かった。」

  ソフィ「ミツオさん、大丈夫ですか!?」

  すると、入り口からソフィも入ってきた。ネオはすっかり安心して、ヨロヨロと腰を下ろす。

  ミツオ「ソフィ、ありがとう。どうなるかと思ったよ。ルーシャは?」

  ソフィ「警察を呼びに行っています。もうすぐ、到着するはずですから、その前に犯人をやっつけましょう。」

  

  犯人2「そこまでだ!」

  ハッとして、全員は振り返る。自動車の前で金を待っていたもう一人の犯人が、ソフィに銃口を向けた。

  緊張が走る。

  ソフィはゆっくりと両手を上げた。ミツオ達も、体の動きを止める。

  犯人2「パーマンがこんなにいたとはな。ミネルダには二人だけだと思っていたが・・・。」

  犯人1「もう金も運んだし、こいつらとはおさらばしねぇか?」

  二人の犯人はうなずきあう。

  犯人2「まずは、こいつから。」

  銃の取っ手が、ゆっくりと引かれた・・・。

  ミツオ「危ない!」

  その瞬間、ミツオがソフィの目の前に飛び出した。

 

  ― ズドーン・・・!!

 

  ソフィは思わず目を瞑る。

  ミツオ「うっ・・・・。」

 

 

  しばらく沈黙の時が流れた。パーマン達は、伏せていた顔をそっと上げる・・・。

  ミツオの体が傾き、崩れていった。

  マリンカ「ミツオくん!」

  犯人2「やったか・・・・。」

  犯人が銃口をそらした。すると、床に伏せていたミツオの体が素早く動いた。

  蹴りが見事に、犯人の腹に命中する。

  犯人1「どうして、生きている!」

  彼はもう一人にもこぶしをたたき付けた。うめき声と共に、男達はフラフラと倒れ込む。

  ミツオ「やった・・・。」

  すると、胸のバッチがそっと床に落ちた。弾のせいで、浅い窪みが出来ている。

  ネオ「そうか、パーマンバッチにあたったから助かったんだ・・・。」

  ロン「ミツオ!」

  パーマン達が、一斉にミツオのもとへ駆け寄った。

  彼は何事もなかったように、立っている。

  マリンカ「ミツオくん、素敵だったわよ! あたし、感動しちゃった。」

  ロン「まさかバッチに命中するなんて、思ってなかったよ。そうなることは計算済みだったのか?」

  ミツオ「・・・。」

  すると、彼はヨロヨロと床に倒れ込んだ。

  ソフィ「ミツオさん?」

  ミツオ「よかった・・・、死ぬかと思った・・・。」

  どうやら緊張がとれて、体の力が抜けてしまったようだ。

  ちょうどそのとき、ルーシャが大勢の警察官を引き連れて、銀行に戻ってきた。

  ルーシャ「ミツオくん達は、大丈夫!?」

  列の先頭にいた彼女は、慌ててミツオのもとへ駆け寄った。

  ルーシャ「死んでないでしょうね?」

  ミツオ「勝手に殺さないでよ。」

  彼は苦笑いをすると、ゆっくりと体を起こした。警察官が、倒れている犯人達の腕に手錠をかけている。

  事件は、無事に解決したようだ。

  パーマン達は、それぞれの自宅へ帰ることにした。

 

  PBハウス。

  久しぶりに味わったスリルに、四人は楽しみながらも疲れ果て、早めにベッドについた。

  ミツオも水を飲み、今日の出来事を振り返る。

  ミツオ(四年間もほとんど勉強だけで過ごしてきたからな。そのせいで、体がなまっていたのかも・・・。)

  最初は、銀行強盗なんて軽く捕まえられると思っていた。

  地球でパーマン活動をしているときも、銀行の事件は数え切れないほど起こったが、今日ほど手こずったのは珍しい。

  まだ結成したてのチームだったということもあるが・・・。

  ソフィ「ミツオさん、何故そんなに難しい顔しているんですか?」

  突然ソフィに話しかけられ、ミツオは驚いた。

  ミツオ「なんでもないよ。ただ、今日の事件をもっと手早く解決する方法はなかったのかなって・・・。」

  ミツオは手に持っていたガラスのコップを、机に置いた。

  ソフィは少し考える。

  ソフィ「そうですね・・・。でも、あの時のミツオさんは、とても素敵でしたよ。」

  ミツオ「そうかな。」

  ソフィ「・・・わたしの命を、守ってくださったんですから。」

  彼女は瞳を閉じた。

  拳銃を恐れることもなく、飛び出してくれた彼・・・。

  ソフィ「なかなか出来ることじゃないですよ。」

  すると、ミツオは照れ笑いを浮かべた。

  ミツオ「あの時は、無我夢中だったんだよ。今までにも、拳銃の弾がバッチにあたったケースが何度もあってさ。そのた

       びに命拾いをしたんだ。もしかしたら今度も・・・なんて考えてる余裕、実際にはなかったけど。」

  ソフィは笑った。ミツオは、彼女の最高の笑顔を見た気がした。

  ソフィ「ありがとうございます、ミツオさん。」

  そう言うと、ソフィは自分の部屋に入っていった。

  ミツオ「・・・ソフィ?」

  何故だろう。今日のソフィは、いつもの彼女とは雰囲気が違って見えた。

  ミツオはしばらく、彼女の部屋のドアを見つめていたが、9時になったのを確認すると自室に戻った。

 

 

  「ほう・・・、1号も少しは成長したみたいじゃないか。」

  円盤のモニターを覗き込んで、その超人はつぶやいた。

  「仲間の命を助けようと、必死になる姿・・・。あたしは、キミをパーマンに任命して良かったと心から思うよ。」

  満足そうな笑顔を浮かべると、赤いスイッチを押した。

  すると画面の映像が切り替わり、今度は赤いマスクを被った少女の姿が映し出される。

  『あたし、どうすればいいのかわからない。ミツ夫さんのことを忘れてしまうのはつらいけど、夢をあきらめるわけにもいかないの。』

  『彼はきっと許してくれるわよ。夢を叶えろって言われたんでしょう?』

  『でも、悲しむわ。ミツ夫さんも、あたしのことが好きって言ってくれたもの。それに、コピー・・・。あなたとも、お別れしなく

   ちゃならないのよ?』

  『それは・・・。』

  会話の様子を見て、超人はモニターのスイッチを切った。

  彼女は、かなり深刻に悩んでいるらしい。

  「さて・・・、忙しくなるな。」

  彼はレバーを引くと、地球を目指して円盤を操縦した。

 

                 

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