LIKE A SHOOTING STAR                    

          ミツオ留学後の世界を描いた、連載ストーリーです。

 

 24、古の龍伝説(後編)

 

 1、

  地震は更に頻度を増し、ドラゴンの声も一層大きくこだました。

  ミツオたちは警戒心を高めながら、洞窟を進んでいた。途中いくつかの分かれ道があり、カンを頼りに前へ

  進んでいく。

  フェリオ「本当にこっちの道であっているの?まさか、何のアテもなく彷徨っているんじゃ・・・。」

  ソロ「ドラゴンは火山の中心近くに住んでいると言われる。つまりドラゴンに近づくにつれ、暑くなるはずだ。

  だから・・・。」

  ミツオ「確かにどんどん暑くなってきているみたいだよ・・・。」

  四人の額には汗が滲んでいた。洞窟も最初の頃に比べてかなり広くなってきた。天井など、先が見えない。

  ヒカリゴケのおかげもあり、目も慣れ、視界も広がった。

  ロン「それにしても、このドラゴンの声・・・不気味だな。本当に何かに怒っているみたいだ。」

  フェリオ「円盤が不時着しただけで怒るなんて、短気なドラゴンだよ・・・。」

  そこに突然、ぐ〜っという音が響いた。彼らはサッと警戒態勢を取る。

  ロン「何だ?ドラゴンか!?」

  ミツオ「いや・・・えっと、今のはぼくのお腹の音です・・・。」

  ヘコー!

  ロン「ったく、紛らわしい音出すなよ!」

  ソロも呆れたようにため息をつく。しかし緊張が一気にほぐれた気がした。

  フェリオ「でも確かにお腹が空いたね。この辺で少し休憩して、食事にしない?」

  ロン「食事って、材料がどこにも無いだろ。こんな岩しかない洞窟じゃ・・・。」

  するとフェリオはポケットから袋を出し、中からその小さな袋に入っていたとは思えないフライパンを取りだした。

  フェリオ「バード星の四次元袋。この中に、食材や道具まで一通り揃っているんだ。」

  彼はニコッと笑った。

  暗い空間にカセットコンロの火が付く。手際よく料理を作るフェリオの手並みは、まさにプロのようだった。

    三十分も経たないうちに、彼らの前に美味しそうな食事が並べられる。

  フェリオ「さぁ、完成。沢山食べてよ。」

  ミツオ「うひゃー!いただきますー!」

  皆はその場に腰を下ろし、早速皿を手に取る。ソロも勧められて、スプーンを握った。

  美味しそうな香りが洞窟に広がる。

  ロン「んまーい!やっぱりフェリオは凄いな。お前と友達になれて良かったよ!」

  ソロ「これは・・・食べたこともない味だが、確かに美味しいな。」

  フェリオは満足そうに、料理を平らげる彼らを見ていた。しかし、みるみるうちにその表情は曇る。

  ミツオは不思議に思って尋ねた。

  ミツオ「どうしたの?フェリオ。」

  フェリオ「いや・・・ファラのことが心配で。ファラは本当にこの星にいるのかな。どこで何をしているんだろう・・・。」

  それを聞いて、ミツオもロンもハッと思い出した。

  ロン「そうだ・・・色々大変なことがあってスッカリ忘れていたけど、オレたちエディを追って、この星に来たんだった。」

  フェリオ「え・・・っ、忘れていた!?こんなに大事なことを・・・!」

  ミツオ「でも今はソフィたちを助けるのが先だよ。何て言ったって、こっちは命がかかってるんだからさ。」

  するとフェリオは少し腑に落ちない顔をしたが、「勿論そうだよ・・・。」と呟いた。

  そして、また起こる激しい揺れ。

  ソロは皿を置き、立ち上がった。

  ソロ「さぁ、休憩はもう終わりだ。一刻も早く、先へ進まなくては。」

 

  洞窟を進むにつれ、四人の足は重くなっていった。

  額には大量の汗がにじんでいる。火山の中心に近づいてきたのか、暑さが増してきたのだ。

  まるで高温のサウナの中にいるようだ。

  ロン「暑い・・・暑い暑い暑いっ!」

  時折汗を拭いながら、ロンは本音を言葉に出す。焼けるような暑さ・・・このまま進んでは、いつかマグマに

  突っ込んでしまうのではないかと思わせる。

  三人の足取りがうつろになっても、ソロだけは真っ直ぐ正面を向いて進んでいた。

  ソロ「文句を言うな。目的地が近づいたという証拠だ。」

  フェリオ「大体、その伝説って本当にアテになるの?普通の生物は、こんな環境で生き続けられないって・・・。」

  その時、ドラゴンと思われる生き物の鳴き声が大きく共鳴した。

  近い・・・!誰もがそう思った。

  フェリオ「と、ところでさ・・・手ぶらで来ちゃったけど、何か武器になるものはあるの?」

  ロン「そ、そうだよ!何かこう・・・でっかい勇者の剣とかないのか?絶対に通さない盾とか、矛とか・・・。」

  ソロ「おい!見ろ!」

  突然ソロが足を止めて、前方を指した。

  顔を上げると、目の前に大きな空間が広がっていた。マグマの近くだからか、全体が赤っぽく見える。

  ドームのような広さの洞窟・・・しかし、見る限りそこには何もいなかった。

  ミツオ「ド、ドラゴンは・・・?ここじゃなかったの?」

  ソロ「いや・・・そんなはずは・・・。」

  ― まさか、もう村に・・・?

  ソロは恐る恐る、その空間に足を踏み入れた。警戒心を高めたままで、洞窟の中央へ進んでいく。

  ミツオたちも、体を震わせながら、ゆっくりと彼の後に続いた。

  岩だらけの洞窟には、今までと同様何もない。ただ、マグマの音だけが聞こえてくる。

  見上げると、頭上高くに穴が空いていて、空が見える。

  その時だった。

  突然、強風が吹き、砂煙が立った。そして、四人の前に舞い降りた一つの影・・・。

  彼らはその勢いで、吹き飛ばされた。

  ソロ「出たぞっ!」

  ソロが声を張り上げた。砂煙の中から現れたのは、物語の世界で見るような、巨大なドラゴンだった。

  赤いゴツゴツとした巨体に、黄色に光る瞳。鋭い爪と牙。背中には大きな翼。

  威嚇の声が洞窟に響き、彼らは思わず体を震わせた。

  ロン「こ・・・これがドラゴン・・・!?でかい!」

  ソロ「どうか・・・どうか、お鎮まりください!大変なご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます・・・。」

  ソロがその場にひざをついた。

  言葉こそしっかりしているものの、手足が震えている。流石のソロも、怪物を目の前にして恐怖を隠せないようだ。

  ドラゴンはその姿を見て、手を大きく振りかざした。

  三人の誰もが、ソロの危険を察した。

  ロン「ソロ!くそっ・・・何か戦えるものはないのかよ!」

  ミツオ「そ、そうだ・・・!パーマンセット!」

  彼の言葉にロンとフェリオはハッとした。そうだ、ロリーナに言われて持ってきていたのだ。

  かつて母星でパーマンとして活躍していた時に使っていた、自分のパーマンセット!

  ソロ「どうか・・・お許しを!オレはいいから、村の皆だけはどうか・・・!」

  ロン「危ない!」

  ドラゴンがその鋭い爪を振り下ろしたのと、ロンがソロの体を抱えて飛び去ったのは、ほとんど同時だった。

  パー着した三人は飛び上がり、ドラゴンを見下ろす。

  ミツオ「あ、あのさ!ごめんね、ドラゴンくん!ぼくたちは、君に謝りに来ただけなんだけど・・・!」

  フェリオ「あいつに言葉が通じるの!?」

  ドラゴンは目を光らせながら、こちらを睨んでいる。広い空間と言っても洞窟の中・・・逃げ回るスペースもない。

  ロン「とにかく、村へ飛んでいく前に、力尽くででも何とかしないと・・・!」

  ソロ「ダメだ!ドラゴンをこれ以上怒らせては、火山が噴火する!」

  ソロに言われて、ロンはそれを思い出した。

  ― じゃぁどうやって・・・言葉も通じないドラゴンを宥めればいいんだ・・・。

  ミツオ「とにかく、一生懸命訴えてみるしか・・・。」

  その時、ドラゴンの体に、どこからともなく飛んできた巨石が勢いよくぶつかった。彼らも辺りを見渡す。

  どこから、こんな巨石が・・・!

  「ドラゴンに許しを請おうなんて、無駄な努力だな。」

  見上げると、ドラゴンの頭上に二つの人影・・・。

  ロン「エディ!」

  フェリオ「ファラっ!」

  そう、そこには彼らが追っていたはずのエディとファラの姿があった。石のエネルギーで宙に浮いている二人、

  きっと先ほどの岩もそのエネルギーによるものだろう。

  ドラゴンの目が一層鋭くなり、声を張り上げた。

  ミツオ「何をするんだ、レモンくん!ドラゴンを怒らせたら、火山が噴火するんだよ!」

  ロン「レ、レモンくん!?」

  エディ「勿論、それを承知でやっているんだ。この火山が噴火すれば、あの村の人々も溶岩にのみ込まれるだろう。

  そうすることで、負の感情を沢山吸収できる・・・。」

  ソロは突然現れた少年に動揺していた。エディは再び近くの岩を砕き、ドラゴンにぶつける。

  ファラ「レモンくん?このドラゴンは悪いドラゴンなの・・・?」

  エディ「そうさ。君たちだって、これを退治しに来たんだろ?」

  ソロ「退治ではない!お前らは何なんだ!仲間に害を与える奴は、このオレが許さないぞ!」

  ソロはロンの腕の中で暴れた。

  ― このままでは・・・このままでは噴火が!

  フェリオ「ファラ!戻ってくるんだ!いくらエディさんでも・・・こればかりは許せませんよ!」

  エディは気にもしないで、エネルギーを岩に送り続ける。

  ロン「やめろ!エディッ!」

  すると突然、地面が揺らいだ。マグマが煮え返る音が大きくなったと思ったら、

  空間が激しく揺れ、火山が噴火した音が響き渡った。

  洞窟の壁が崩れ、地割れが起こる。

  ソロ「火山が・・・噴火した!!」

  エディ「いいぞ!計画通りだ。後は空高くでより多くの感情エネルギーを集める。こい、ファラ!」

  二人の姿が上昇し、天井に空いた穴から飛んでいった。

  フェリオ「ファラ!」

  ミツオ「見て、ドラゴンが!」

  するとドラゴンも急上昇し、その穴から空を目指した。三人も慌てて後を追う。

  ソロ「村を襲うつもりだ!仲間に知らせないと!」

 

2、

  ルーシャ「火山が・・・火山が噴火してるわ!」

  ドロドロのマグマを勢いよく噴き出す火山を見上げ、ルーシャが声を上げた。ラナも思わず叫び声を上げる。

  ラナ「ミツオくんたちは何をしているのよ!」

  ソフィ「ミツオさん・・・みんな・・・!」

  するとソフィのポケットの中から、レーダーのような音がした。例の石の探知器が反応しているのだ。

  ソフィ「この反応・・・もしかして、エディさんは近くにいるんじゃ・・・。」

  ルーシャ「あれを見て!」

  その声にソフィも顔を上げる。火山の方角から、大きな影がこちらに向かって飛んでくる。

  三人は一目でその正体がわかった。

  ラナ「ドラゴン!!」

  ルーシャ「ほ、本当にいるなんて・・・!あたしたち、どうなるの!?」

  ポポ「わ、私が皆さんを逃がします!」

  その声に、三人は驚きに染めた瞳で振り向いた。ポポがそう言って、ソフィの縄をほどこうとした。

  しかし・・・。

  「ドラゴンが来た!生け贄を捧げ、怒りを鎮めよ!」

  見ると、四人の周りに原住民たちが大勢集まっていた。そのリーダーと思われる男が声を上げ、何人かがソフィたち

  に近寄ってきた。

  ラナ「い、イヤよ!あんな怪物の餌になるなんて!」

  ― エディ、助けてっ・・・!

  ポポ「待って下さい、お父様!」

  するとポポが両手を広げ、住民達の前に立ちはだかった。

  ポポ「もう少しだけお待ち下さい!きっと、ソロが来てくれるはずです!だから、もう少しだけ・・・!」

  「何を言う、ポポ。このままでは、我等の村が崩壊してしまう。ご先祖と同じ運命を辿ることになるのだぞ!」

  ドラゴンと溶岩により、この村は死の世界に・・・。

  「構わん!娘どもをドラゴンに引き渡せ!」

  すると数名の男がポポを押し倒し、ソフィたちに駆け寄った。見ると、ドラゴンがすぐそこまで来ていた。

  三人の足が恐怖で震える。

  ソフィ「みんな!助けて・・・!」

  「待てー!!」

  空から声が聞こえた。見ると、ミツオ、ロン、フェリオ、ソロがパーマンマントでドラゴンの後を追うように飛んできた。

  誰もが顔を上げる。

  少女達はパァッと顔を輝かせた。

  ソフィ「ミツオさん!ロン!フェリオさん!」

  ロン「待つんだ、ドラゴン!オレたちの大切な仲間に、指一本でも触れたら許さないぞっ!」

  するとドラゴンはその場で止まった。

  そして、村全体を見渡すと、翼を振り上げ、強風を送った。

  ミツオ「と、飛ばされるー!!」

  あまりにも強い風で、そこにいた人々は全員、吹き飛ばされた。

  

  ミツオ「・・・うーん・・・あれ、どうなったんだっけ・・・。」 

  どれくらい意識を失っていたのだろう。

  気が付いたら、ジャングルの中だった。村は見えない。かなり遠くまで飛ばされたのだろう。

  周りを見ると、ロンたちや、原住民たちも皆そこにいた。

  ロン「あれ・・・ここはどこだ?ドラゴンは?」

  ソロ「あんな強風じゃ・・・きっと村は・・・。」

  フェリオ「見てよ!火山があんなにも溶岩を・・・。」

  少しずつ起き上がってきた彼らは火山を見上げた。今もなお、マグマを吹き続けている。

  ルーシャ「あ、あれ・・・!」

  すると前方から勢いよくマグマが流れ込んでくるのが見えた。

  このままでは、自分達がのみ込まれてしまう。逃げようにも逃げ場がない。

  しかし、そこで彼らの目の前に現れたのは、あのドラゴンだった。ドラゴンは流れてくる溶岩の方を向き、彼らを

  かばうように翼を広げた。

  ミツオ「ド、ドラゴン・・・!?」

  ドラゴンは背中をかがめる。まるで自分達に、乗れ、と言っているように見えた。

  ソロ「な、何でドラゴンが!」

  ソフィ「皆さん、とにかくドラゴンに乗りましょう!このままでは、マグマにのみ込まれてしまいます!」

  もうマグマがそこまで来ている。皆は慌ててドラゴンの背中に飛び乗った。

  のみ込まれる・・・!そう思った時、ドラゴンは空へ飛び立った。

  空からはマグマに包まれた地上が見えた。

  ロンたちは不思議そうに、ドラゴンの背中から見下ろしている。

  ロン「ま、まるでドラゴンがオレ達を助けようとしていたような・・・。」

  頭が混乱した。

  伝説では、ドラゴンが村を壊滅させるとされている。決して怒らせてはいけない、恐怖に満ちた敵であったはずだ。

  それがどうして・・・。

  ポポ「ソロ!」

  ソロ「見て下さい、姉上・・・。オレたちの村が、マグマに・・・。」

  そこから見えたのは、溶岩で押し流され跡形もなくなった彼らの集落だった。

  ドラゴンの背中に乗った原住民たちは、黙ってその光景を見下ろしていた。

  ルーシャ「でも・・・、ドラゴンが風であたし達を飛ばしてくれたおかげで、死者は一人も出ずに済んだんじゃない

  かしら?」

  その言葉を聞いて、ソフィはハッとした。

  ソフィ「さっきのドラゴンの行動もそう・・・もしかしたら、この子は、初めからわたし達を守るつもりだったのでは?」

  ソロ「な、何だって・・・。」

  彼が驚いたような表情を浮かべる。

  ソフィ「火山はドラゴンが怒ったから噴火したんじゃありません。きっとドラゴンは、この星の守り神のようなもので、

  火山が噴火すると人々を守るために、マグマから遠ざかるよう強風を起こして逃げる手助けをしたのかもしれ

  ません。」

  フェリオ「そうか、だから噴火と同時に村に向かったんだ。」

  ソフィはうなずいた。

  ソフィ「わたし達が勢いよくこの惑星に衝突したことで、地盤を刺激し、噴火を起こしてしまったんですね。」

  ソロ「ドラゴンが怒ったからじゃなかったのか・・・。」

  確かに村は壊滅したにしろ、その伝説でも同様、誰も死んでいない。

  この辺り一帯を溶岩が覆い尽くすほどの大噴火。

  今、皆でこうして生きているのはドラゴンのおかげ他ならないのだ。

  ソフィ「ミツオさん、ロン、フェリオさん。危険を冒して、わたし達を助けようとしてくれて、ありがとうございました。

  お疲れさまです。」

  ソフィは彼らに向かって微笑む。

  ルーシャ「遅いから、食べられたんじゃないかと思ったわよ。本当に恐かったんだから。」

  フェリオ「そうだ、ファラを追わなきゃ!まだ近くにいるかもしれない!」

  その言葉を聞いて、ラナは振り向いた。

  ラナ「えっ!ということはエディも!?・・・会ったの?」

  

 

  エディ「おかしいな・・・。予想以上に負のエネルギーが集まってこない。」

  空の上で。

  エディとファラは地上を見下ろしていた。大地ほとんどを覆い尽くしたマグマ。

  他に類を見ない大噴火だった。

  ― この分だと、相当な感情エネルギーを得られるはずだが・・・。

    確かに多少は集まったが、期待していたほどではない。これだけでは、まだまだ足りない。

  地上で何が起こっているのか・・・。

  ファラ「レモンくん?感情エネルギーっていうものは集まったの?」

  エディ「少しはね・・・。ミツオくんたちにも顔を出してしまったわけだし、すぐに次の星にでも移るか・・・。」

  ファラはそんなエディを不思議そうに見つめた。

  ファラ「感情を集めたいのなら、パーティを開くのはどう?とっても楽しいから、みんなのハッピーがすぐ集まると

  思うの!」

  エディ「はぁ・・・。パーティなんかやらないよ。そんなの意味が無い。」

  ファラ「そんなことないよ?みんなで集まって遊ぶのって、とっても楽しいもの!」

  しかしエディは呆れたような声を出す。

  エディ「楽しい?そんな感情はもう忘れてしまった。ぼくは一人の方が気楽でいい。むしろ・・・人と関わりたくない。」

  最初は皆、ぼくのことを期待の目で見ていた。ぼくを歓迎してくれていた。

  だからぼくも、それに応えようとしたんだ。

  でも、結局は力を得すぎて捨てられた。

  ぼくはいつの間にか、ただ恐怖の対象でしかなくなっていたんだ。

  それからは果てしない宇宙を独りで彷徨って・・・ずっと、何もない。音も聞こえない空間に独りぼっちだったんだ。

  エディ「やっぱり人間なんて、嫌いだよ・・・。」

  ファラ「・・・・。」

  そういうエディの背中は、ファラには少し寂しげに見えた。

  彼女には今のエディが、どことなく悲しい影を持っているような気がしたのだ。

  ファラ「一人で寂しかったの・・・?」

  エディは黙って振り向きもしない。

  ファラ「だったら、わたしが教えてあげる。楽しい、嬉しい、そういう感情を。わたしが・・・友達になってあげるよ。」

  その声は優しかった。

  かつて、そんな優しい言葉を聞いたことがあっただろうか。

  エディは振り向いた。

  エディ「変わってるよな、君は・・・。ぼくにとって君は、ただ食事を供給するためだけの存在でしかないのにさ。」

  ファラ「お料理を作るのは大好きだよ。」

  エディ「・・・そういうことじゃないんだけど。君、名前は何ていったっけ?」

  彼女は微笑んだ。とても明るく、優しく、温かい笑顔だった。

  エディには、それがどこか懐かしく感じだ。

  ファラ「ファラだよ。」

 

3、

  それからしばらくて噴火も収まった。

  ドラゴンは皆を降ろすと、そのまま火山の麓に再び帰って行った。

  火山が噴火したとき、ドラゴンが村へやってくる。

  確かに伝説の通りだった。だが、ドラゴンの真の目的が明らかとなったのだ。

  ポポ「あのドラゴンは、この星の守り神だったんじゃないかしら。私たちを、助けてくれたのね。」

  溶岩が冷えた頃に、村人達は村へ帰った。

  そこには何もなかった。自分達の住んでいた家も、何もかも。

  多くの人の目には光が失われていたが、そんな彼らの前で、ソロは言った。

  ソロ「ドラゴンはオレたちを守ってくれたんだ。オレたちにとって、一番大切な命というものを。これは、終わりじゃない。

  はじまりだ。また、村を作り直そう。かつてのご先祖のように。」

  ミツオたちもその様子を見ていた。

  ソロなら、仲間に希望の光を宿し、これからもまとめていくことが出来るだろう。

  ソロ「そしてオレたちも、子孫のために伝説を伝えていくんだ。今度は正確に。ドラゴンを、守り神として。」

  原住民たちは黙ってそれを聞いていたが、ポポが一人拍手をした。

  するとその拍手は皆に広まり、気が付けば大歓声で包まれていた。

  村人達には笑顔が溢れている。

  ソフィ「この笑顔はドラゴンが守ったんですね。」

  フェリオ「火山のそばで、いつも噴火をしないか見張っていたのか。何だか、映画にありそうな話だよ。」

  ミツオ「宇宙の神秘ってやつだね。」

  彼らも笑顔で見ていたが、やがてラナが思い出したように言った。

  ラナ「そうだ、エディは!?近くにいるんでしょ?」

  ソフィはポケットから探知機を出す。しかし、既にその反応は無いに等しかった。

  ソフィ「・・・どうやら、この星にはもういないようですね。」

  フェリオ「そ、そんな!だったら、すぐに追わなくちゃ!」

  ロン「勿論、すぐ出発するぞ!」

  それを聞いて、ソロがミツオたちに歩み寄ってきた。

  ソロ「色々とありがとう。これから、皆で景気付けのため祭りを開こうと思うのだが、一緒にどうだ?」

  ミツオ「ありがとう。でもすぐに行かなくちゃいけないんだ。」

  ロン「頑張れよソロ。一から村を作り直すなんて大変だと思うけど、命が助かっただけ感謝しなくちゃな。」

  するとソロは子供らしく無邪気に笑った。

  フェリオ「さぁ、早く円盤へ戻ろう!」

  

  ルーシャ「直りそう?フェリオ。」

  彼らはソロとポポに別れを告げ、円盤が不時着した地点まで戻ってきた。

  落下のショックで、円盤が壊れて飛べなくなっていたのだ。

  修理しているフェリオを女子達は見守る一方、ミツオとロンは地面に寝転んで空を眺めている。

  ロン「はぁー、それにしても疲れたよな・・・。別にドラゴンは怒っていたわけじゃないんだから、オレらが火山の麓に

  まで向かう必要はなかったんだよ。」

  ミツオ「結局、レモンくんも捕まえられなかったしね・・・。」

  不思議な呼び名に、ラナは問いかける。

  ラナ「何よ、そのレモンくんって。」

  ミツオ「あの石をぼくはそう呼んでるんだ。だって今のエディは、エディじゃなくて、あの黄色く光る石なんだから。」

  ルーシャ「えー?なんでレモンくん?」

  そんな風に話をしていると、円盤の底からフェリオが「直った!」と這い出てきた。

  フェリオ「そんな大した故障じゃなかったからね。簡単に直ったよ。」

  ソフィ「凄いですね、フェリオさん。円盤を直してしまうなんて。わたしにはとても出来ないですよ。」

  フェリオ「メカには強いから。」

  そう笑ったフェリオは、円盤のハッチを開けた。

  フェリオ「さぁ、早くはやく!ファラを取り戻すために、出発しよう!」

  ラナ「エディも取り戻すために!」

  ハッチが閉まり、円盤は上昇した。

  大地から離れる円盤・・・窓からは、あの火山と、小さな集落が見えた。

  今回エディはどれだけの感情エネルギーを手に入れたのか?それはわからないが、一刻も早く石の意思からエディ

  を救わなければならない。

  ミツオには、それは同時にレモンくんを救うことにもなるような気がした。

  ― レモンくんがあそこまで人間不信なのは、何か理由があるんだ。もしかして、あの女の子・・・。

  シャンティと関係があるのかな・・・?

  シャンティは、どこから来たんだろう・・・。

  円盤はその惑星から、宇宙空間に飛び出した。

 

  

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