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          ミツオ留学後の世界を描いた、連載ストーリーです。

 

 23、古の龍伝説(前編)

 

 1、

 

   ラナ「つまり・・・、つまりエディはあの石に体を乗っ取られているってことね・・・。」

   バード星本部に戻ってきたミツオたち。

   彼らは今、起きている現状にただただ困惑していた。

   フェリオ「ファラ・・・、大丈夫なのかな。バード星の征服を企んでいるような奴だ・・・ファラがどうなることか・・・!」

   ミツオ「フェリオ、落ち着きなよ。多分だけど、あの石はそこまで邪悪な奴じゃないよ。

   ただ、自分を護るのに必死なだけなんだ・・・。」 

   すると、フェリオをはじめ、皆はミツオの方に顔を向けた。

   フェリオ「・・・何でミツオくんにそんなことがわかるのさ?」

   アルド「おーい、ロリーナたち!外が騒がしかったみたいだけど、何かあったのかい?」

   廊下を駆けてきたアルドの姿に気付き、ロリーナは振り向く。

   そして、今の状況を説明した。

   アルド「なるほど、そんなことがね・・・。ピンクちゃんの言うことは、本当だったと言うことか・・・・。」

   ロリーナ「とにかく、ファラちゃんも捕まっているんだし、今すぐにエディくん達を追わないと・・・!」

   ソフィ「でも、この広い宇宙で彼らを当てもなく捜し回るなんて・・・。」

   するとアルドはニコッと笑った。

   アルド「大丈夫!ピンクちゃんに相談してみたら、何か教えてくれるかもしれないよ。」

 

   地下の鉄格子の部屋。

   ミツオ達はそこにいた一人の少女に目を疑った。彼らには、見覚えがあったのだ。

   以前、自分達のPBハウスに訪れた、謎の美少女だった。

   アルド「この子は、シャンティちゃんっていうんだ。石のことに詳しいから、何でも教えてくれるよ、きっと。」

   シャンティ「そんなこと言ってないんだけど。」

   ミツオたちは少し不安だった。

   かつて彼らはこの少女に、何とも言えぬ不安と恐怖を抱いたのだ。彼女が秘める、オーラを感じて・・・。

   しかし、今彼女は鉄格子の中。自分達に何も出来ないだろう。

   アルド「・・・と、言うわけでさ。エディくんっていう男の子に乗り移ったみたいで、バード星の外に逃げてしまったん

   だ。僕等は一刻も早く、彼らを見付けて助け出したいんだけど。」

   シャンティ「そう・・・。やはり、そうなったの。でも・・・。」

   彼女は険しい表情を浮かべて、鉄格子の外の彼らを睨んだ。

   シャンティ「わたしに協力しろと言うの?確かに、ここに閉じ込められているのは、あなた達のせいではなく、石の

   力。でも、少し虫がよすぎない?」

   ロリーナ「石の力で閉じ込められている?どういうこと?」

   シャンティ「あの石は、わたしのことを知っている・・・。わたしが、自分の邪魔をするだろうと思って、この鉄格子に

   力を与え、閉じ込めているのよ。だから、どんなことをしても、ここからは出られない。」

   そして、自分が所持しているテレポートや銃などの道具も使えない。

   シャンティ「わたしも、あの石を捕まえたいのは山々だけど、今起きていることは、あなた達の責任であって・・・。」

   ラナ「大切な人なんです!!」

   するとラナが、鉄格子を両手でつかみ、シャンティに向かって声を上げた。

   ラナ「石に乗っ取られているのは、あたしの大好きな人なんです・・・。不安で・・・心配でたまらない。あの子の

   ためなら、あたしは何でもする。たとえ・・・命にかえても。だから・・・お願いです。助けて下さい!」

   その顔は真剣だった。シャンティはこの少女と初対面だったが、彼女の想いは生半可なものではないと感じられた。

   ― わたしにも大切な人がいる。その人のために、今こうして必死に石を追っている。この子も同じ気持ちで・・・。

   シャンティ「・・・これを貸してあげるわ。」

   すると彼女は、ポケットから一つの器械を取りだした。片手で持てる大きさのそれは、レーダーのようなものが付い

   ている。針はほんの少しだけ、今も反応していた。

   ミツオ「何、これ?」

   シャンティ「これは、あの石の探知機のようなものよ。かつて、わたしの星で石を研究していた両親が作ったもの

   なの。この反応を頼りに探せば、きっと見付かるわ。」

   これは腰に付けた銃などと違って、ポケットの底に忍ばせていたため、今でも使用可能なのだ。石が感情から得た

   エネルギーの反応をもとに作動する。

   ミツオはそれを受けとった。

   シャンティ「ただ一つ注意しなくてはいけないのは、あまりにもあの石が膨大なエネルギーを得ると、近づくほどに

   反応が大きくなりすぎて、レーダーの針が吹っ切れてしまうこともあるの。壊れると、あなた達には簡単に直せない

   でしょうから、その前に電源を切ることをおすすめするわ。」

   ラナ「これでエディを・・・。ありがとうございます・・・!」

   少女はミツオ達に協力してくれた。意外と優しい気持ちの持ち主なのかもしれない。

   確かに今でも不思議なオーラを感じるのだが、この少女はどんな想いで石を追っているのだろう?

   何か・・・何か大切な理由があるように思えた。

   ロン「よーし!エディの円盤で、早速探しに行こうぜ!・・・って、マーカスは?」

   彼らは辺りを見回した。

   そう言えば、いつの間にか彼の姿がない。どうせまた何かのスクープを追っていったに違いないが。

   ルーシャ「どうするのよ、マーカスがいなくちゃ円盤を操縦できないじゃないの。」

   フェリオ「あの・・・、ぼくは少しなら操縦できるけど?」   

   すると彼らはハッとしたようにフェリオを見た。そういえば、以前もフェリオの操縦した円盤に乗ったではないか。

   ロン「あはは・・・スッカリ忘れてた。じゃぁ、今すぐにでも行けるな!」

   ラナ「それに、あんなトラブルメーカーがいると事態を更に悪化させそうだし・・・。」

   ここは置いていくのが無難・・・。

   ソフィ「でも長い旅になるのでは?その間、ミネルダはどうすれば良いのですか?」

   ロリーナ「それなら、コピーロボットを使えばいいわ。」

   するとロリーナは6体のコピーロボットを、彼らの前に差し出した。

   ロリーナ「さぁ、それぞれ鼻を押して。ロックをかけておくから、鼻をぶつけただけで変身が解けないようになってる

   わ。」

   アルド「僕等も付いていきたいところだけど、このことをあまり大事には出来ないからね。特に計り知れないパワーを

   持つ謎の石が、バード星を支配しようと企んでいることが公にされては、星中が大パニックになる。

   だから、困難なことが多いだろうが、君達だけで追って欲しい。」

   それを聞いて、ロンは大きく頷いた。

   ロン「わかってます!必ず、オレらだけで、エディとファラを取り戻して見せますよ!沢山の感情エネルギーを取られ

   る前にな!」

   ロリーナ「何かあったら、すぐにバッチで連絡してね。あと、パーマンセットも持って行った方がいいわ。」   

   ソフィ「わかりました。石はきっと、他の星で人々の感情を集めるに何か事件を起こすに違いないでしょうしね。」

   ミツオも思った。

   ― そして、レモンくんのことも・・・何か悩みを抱えているなら、それを晴らしてあげることが出来るといいけど。

   そして、ミツオ、ロン、ルーシャ、ソフィ、ラナ、フェリオは決意を元に、バード星を後にしたのだ。

   自分のコピーロボットに、担当惑星のパーマン管理を任せて。

   大切な仲間を取り戻すために・・・、この星の平和を守るために。

   ラナ(絶対、助けてみせる。だから待ってて・・・エディ。)

  

 2、

 

  ソフィ「レーダーの反応があります。どうやら、エディさん達はあの星にいるようですが・・・。」

  フェリオの操縦で宇宙空間に飛び出したミツオ達。辿り付いたのは、バード星近くの小惑星群だった。

  その中の一つ、緑に覆われた小さな惑星にソフィは目を付けた。

  ソフィ「この小惑星群は、バード星近くに位置していると言っても、文明が未発達の星が多く、余計な干渉を行う

  ことは禁止されているんです。それぞれが、独自の文化を築き上げるためにですね。」

  ルーシャ「高度な発展を遂げている星よりも、こういう未開発の星の人間からの方が、邪魔が入りにくくて、エネルギ

  ーを集めやすいと考えた訳ね。」

  彼女は納得したように呟く。

  ルーシャ「だから、バード星にもこの星のデータはほとんど無い訳かぁ・・・。大丈夫?危険な星だったりしない?」

  ロン「でも、ここにエディたちがいるんだったら、行ってみるしかないだろ?フェリオ、あの星に着地してくれ。」

  フェリオ「わ、わかってるんだけど・・・。この円盤、操縦が難しくて・・・。」

  操縦席から不安げな声が聞こえてくる。

  フェリオ「と、とにかく着陸態勢に入るよ!」

  すると突然、ガクンッと機体が大きく揺らいだ。そのまま円盤は、惑星目がけて急降下していく。

  ミツオ「うわあああっ!大丈夫なの、フェリオ!?」

  その円盤の勢いは増していく。ミツオ達はテーブルやら壁やらにつかまり、身が振り落とされるのを防いだ。

  大気圏を抜け、窓から緑豊かな大地が見えてくる。

  見渡す限りの森・・・、ジャングルと言った方が無難だろうか。そんな星一体が自然に包まれた大地に、

  円盤は急降下していった。

  ロン「フェリオ!ちゃんと着陸してくれよ!」

  フェリオ「だ、だって・・・!この円盤の操縦方法がよくわからなくて・・・っ!」

  ラナ「きゃあああっ!」

  ドッカーン!!

  機体が大きく震動し、けたたましい音が響いた。ミツオ達は開いたハッチから振り落とされ、地面に勢いよく体を

  ぶつけた。

  ロン「痛たたたたぁ・・・・。」

  激しく押し出されたショックで、体に鈍痛を感じる。痛みを抑えながら、ロンは上体を起こした。

  空から見たとおり、この星は四方八方ジャングルしか見えない。高く生い茂る木々の間から、太陽の光が

  漏れている。しかし立ち上がると、近くに大きな山が見えた。

  ルーシャ「もぉ・・・ちゃんと着陸してよ〜。痛いじゃないの!」

  フェリオ「ご、ごめん。高級な円盤って、操縦も難しいんだね・・・。」

  皆も体をさすりながら、起き上がった。幸いにも、円盤に大きな外傷もないようで、全員無事だった。

  だが、突然どこからか不気味な音が聞こえてきた。

  何か獣がうなるような・・・低く長い音が、こだましてくるのだ。

  ソフィ「なんですか・・・この音は。」

  ロン「あの山・・・火山かな?そこから聞こえてくる・・・。」

  彼らは顔を上げる。前方に見える大きな火山から、あのうなり声が響いてくる。

  しかも、その火山口からは時折マグマが小さく、ボッと火を噴いた。

  ロン「何だか不気味な山だな・・・。獣でも飼ってるんじゃ・・・。」

  ミツオ「ロン!見て!」

  急にミツオが声を上げた。見ると、円盤と彼らを囲むようにして、大勢の人間がこちらを向いて立っているのだ。

  子供から大人まで、ざっと20名ほど・・・。体には簡単な布を巻き、色鮮やかな羽の首飾りをかけている。

  このジャングルの住民であろうか。

  黒褐色の肌の彼らの手には、ミツオ達に向けられた槍が握られている。

  フェリオ「な、なんだ・・・!この人たち!」

  すると、正面の少年が口を開き、何やら言葉を発した。ただならぬ表情だ。何かに怒っているのか。

  しかし何を言っているのか聞き取れない。

  ソフィ「そ、そうだ!こんなこともあろうかと、翻訳機を持ってきたんでした!皆さん、耳につけてください!」

  皆はポケットから翻訳機を取りだした。

  これはバード星に留学してから共宙語を覚えるまでの間、仲間と会話が出来るように学校から配られたものだ。

  パーマンマスクの耳の部分を、そのまま取り外したような形をしている。

  それをミツオ達は片耳に取り付けた。

  「天から来たりし災いをもたらした、悪魔どもめ!ドラゴンの怒りにふれ、我等の村に大災害が巻き起ころう!」

  ロン「悪魔ぁ!?ドラゴン!?何言ってるんだよ、こいつら・・・!」

  「引っ捕らえろ!そして、ドラゴンに差し出し、怒りを鎮めるのだ!」

  すると、その原住民はミツオ達に歩み寄り、彼らを捕らえようとした。ミツオは慌てて抵抗する。  

  ミツオ「な、何するんだよ!やめっ・・・!」

  そこまで言いかけたところで、頭に鈍痛を感じ、意識を失った。

 

3、

  ミツオが気が付いて、最初に視界に入ってきたものは、とある集落だった。

  布で作った簡単なテントのようなものが、いくつか見えるが、それ以外はジャングルに囲まれているだけで特に何も

  ない。そして、自分の体の違和感に気が付いた。何かに体が締め付けられているような・・・。

  見ると、腰と手足に太いロープが巻かれ、上からつるされている。足が地面に届かない。

  ミツオ「こ、これは・・・!?」

  ロン「ミツオ、気が付いたな。大丈夫か?」

  ミツオ「ロン・・・。って、ロンもみんなも大丈夫じゃないだろ!」

  ミツオの横一列に、同じようにロープで巻かれつられている仲間の姿が。

  どうやら、ここは先ほどの原住民の村らしい。見渡すと、彼らの近くに原住民たちが敵意を持った表情でこちらを

  にらんでいた。

  ルーシャ「何よ!あたし達が何かしたって言うの!?」

  ラナ「どうして、こんな目に遭わなくちゃいけないのよぉ!」

  「お前たちが大きな音を立てたせいで、ドラゴンが怒っている。見ろ、火山があんなにも激しく火を噴いている!」

  声を出したのは、先ほどの少年だった。ミツオたちよりも小さい。

  黒髪の少年は、火山に指を指した。

  不気味なうなり声を上げていた火山・・・、時折 火山口からマグマがボッと吹き上げ、今にも噴火するのではと思わせ

  る嫌な予感がした。

  ソフィ「ど、どういうことなのですか?火山があんなにも活動的になっているのは、わたし達のせいだと・・・!?」

  すると、彼らを見ていた原住民たちが大声で捲し立てた。

  「彼らをドラゴンに差し出せ!」

  「早くドラゴンの怒りを鎮めろ!」

  ルーシャ「全然、意味がわからないわよ!説明してよ!」

  すると、少年が住民たちに向かって「静まれ!」と一声を上げた。すると、彼らはサッと身を退き、黙り込む。

  「いいだろう、説明した上でお前たちには責任を取ってもらう。オレはソロ。この集落のリーダーの息子。」

  オレたちの住むこのジャングルには、一つの大きな火山があって、

  そこには大昔から、一匹のドラゴンが住んでいると言われている。

  古くから伝わる伝説によると、そのドラゴンを怒らせると、火山が噴火し、村に大災害が巻き起こるらしい。

  そして、噴火と共にドラゴンはこの地に降り立ち、村を襲うと言われているのだ。

  だからオレたちはドラゴンの怒りにふれないよう、ひっそりと静かに暮らしてきた。

  だが、どうだ・・・。

  ソロ「お前らは、空から振ってきて、火山の近くであんな大きな音を立てた!きっと、それがドラゴンの機嫌を損ねたん

  だ!その証拠に、今火山はあんなにもマグマを噴き出している!」

  その言葉に反応するように、火山から飛び出たマグマが宙を舞い、彼らに威嚇した。

  ロン「そ、そんなこと言われたって、オレたち何も知らなかったんだし・・・!」

  ソロ「ドラゴンの怒りを鎮めるには、生け贄が必要だ。お前らには、その生け贄となり、ドラゴンに身を捧げてもらう!」

  なっ・・・!?

  「何だってー!?」

  六人の声が響いた。再び住民達は彼らを捲し立てる。

  ラナ「あたし達、ドラゴンの餌になるの?そんなの、絶対にイヤッ!」

  フェリオ「大体、ドラゴンなんて、本当にそんなものがいるっていうのか?!」

  その伝説が真か否か、どちらにしろ、このままでは身が動けないのをいいことに、ドラゴンなるものに差し出されてし

  まうだろう。

  ドラゴンを怒らせると、火山が噴火する。

  だから、その怒りを鎮めるために、生け贄が必要・・・。そんなの、生け贄じゃなくても・・・。

  ロン「だったら・・・、だったらオレらに任せてくれ!」   

  彼が声を上げると、住民達は驚いたように目を丸くした。

  ロン「オレらが、その火山に行って、ドラゴンの怒りを鎮めてきてやるよ。生け贄とかじゃなくてさ。例えば、フェリオの

  美味しい料理とか食べさせれば、落ち着くかもしれないし・・・。」

  フェリオ「ほ、本気なの・・・?」

  ロン「このまま黙って生け贄にされるなんて、我慢できない!ドラゴンを宥めて・・・、この村も噴火から守ってやるよ。」

  ミツオ「そ、そうだよ!直接行って、交渉してみるとかさ!」

  ソロ「そんなこと言って・・・、逃げるんじゃないだろうな。」

  疑い深い目で、ソロが彼らを睨む。しかし、ロンは首を振った。

  ロン「オレたちの責任でこうなったって言うんだろ。オレだって、平和を守ると誓った男だぜ。こんなに大勢の人を、

  見殺しには出来ないよ。」

  その言葉に、ミツオ達は明るくうなずいた。

  ミツオ「ぼくらはパーマン!どこでだって、困っている人達がいるのなら、それを助ける義務があるんだ!」

  ソロ「・・・・わかった。」

  するとロンたちはホッと安堵の息を漏らした。しかし、ソロは冷たい声でこう言った。

  ソロ「だが、ドラゴンのもとに行かせるのは男達だけだ!女は、生け贄 兼 人質として、この村に残ってもらう!」

  ミツオ「えっ・・・!?」

  ソロ「お前らが逃げないように、オレも道案内として火山についていこう。それが条件だ。」

  女子は不安な表情を隠せなかった。

  つまり、男子がドラゴンを宥めることに失敗すれば、確実に自分達の命は無い。

  伝説によれば、噴火と共に必ずドラゴンは、この村に襲いにやってくるのだ。

  ドラゴンがいるにせよ、いないにせよ、火山が噴火すれば、その責任を取らされて、

  この原住民達に殺されてしまうだろう。

  ラナ「そ、そんなの・・・エディが居ればまだしも、この三人で・・・。」

  ソフィ「・・・行って下さい。」

  ソフィが呟いた。そして、ミツオ、ロン、フェリオの方に顔を向け、力強くこう言った。

  ソフィ「三人を信じています。わたし達は村に残りますので、村の人たちの為にも絶対にドラゴンを鎮めてき

  てください。」

  ミツオ「ソフィ・・・!」

  ソロ「決まりだな。」

  すると原住民の男性が、ミツオ、ロン、フェリオ三人のロープをほどき、彼らの身を自由にした。

  ソロ「さぁ、火山を目指すのだ。火山が噴火する前に。ドラゴンがこの村を襲う前に、何とかしてもらおう。」 

  ロン「大丈夫、お嬢さんたち。オレらが絶対に、助けに戻るからさ!」

  彼は女子たちに向かってVサインを送ると、火山を見上げた。今でも、呻き声のような不気味な音が聞こえてくる。

  一体、ドラゴンとは何なのか。本当にいるのか。

  しかし、仲間を取り戻すためにも行くしかない。ソロを先頭に、三人は深いジャングルの密林に向かい、歩き始めた。

  ラナ「あの三人でドラゴンを・・・?不安しかないんですけど・・・。」

  と言うか、エディを探すために、この星に来たんですけど・・・。

 

  エディ「どこから見ても、ジャングル、ジャングル、ジャングル・・・。人間が住んでいるような気配はするのに、

  どこに行ったら居るんだよ。」

  その頃、エディとファラは密林の中を彷徨っていた

  感情エネルギーを手に入れようにも、人間の姿が見当たらない。この星は外れだったか。

  ファラ「さぁ、ご飯が出来たわ。このジャングルには、美味しそうな果物が沢山あるから、食料には困らないわね!」

  手に入れた果物を調理し、ファラはエディの前に並べた。

  彼女がいつも持っている、四次元袋にはアウトドアクッキングに必要な道具まで一通り入っている。この四次元袋は

  バード星で購入したものだ。

  ファラ「沢山食べて、エディさ・・・。じゃなくて、あなたはエディさんに乗り移っている石の意思?みたいなことを

  みんなが言っていたような・・・。わたしにはよくわからないけど、あなたのことは何て呼べばいいのかなぁ?」

  エディ「ぼくの名前・・・?」

  ― じゃぁ、レモンくんって呼ぶことにしよう!

  エディ「レモン・・・。」

  ファラ「レモンくん?レモンくんって、いうの?」

  するとエディは持っていた果物を落として、慌てて言った。

  エディ「ち、違う!ぼくに名前なんてない!レモンくんなんかじゃないっ!」

  ファラ「レモンくん、おかわりもあるからね!」

  エディ「だからぁー!」

  そこまで言って、エディはハッと耳をすませた。どこからか声が聞こえてくる。人間の声だろう。

  エディが茂みをかき分けると、二人の人影を見付けた。黒褐色肌の男性が、果物を積んだカゴを抱え、

  会話をしている。

  エディ「なんだ、この星にもやはり人はいるじゃないか・・・。」

  「あの男の子たちだけで、本当にドラゴンを宥めることができるのか?」

  「ドラゴンを怒らせたとき、火山が大噴火し、村に大いなる災いをもたらすという伝説・・・。どちらにしろ、このままでは

  マグマで村は溶かされ、俺たちも村におりてきたドラゴンによって、無事では済まされないだろうな。」

  ドラゴン・・・?大噴火?

  エディ「これは使えそうだな・・・。」

  彼は左手に見える、大きな火山を見上げた。

 

4、

  ロン「こういうジャングルの中を進んでいると、肉食植物が出てきそうで恐いんですけど・・・。」

  ソロの案内により、ミツオ、ロン、フェリオはジャングルの中、ドラゴンが住むという火山に向かって歩いていた。

  木々が深く生い茂るジャングル、見たことも無い不気味な虫が草の茂みを這い回っている。

  ソロに「このジャングルには毒を持った虫が生息しているから、気を付けて。」という忠告を受け、三人は

  警戒しながら前へ進んでいく。

  ミツオ「肉食植物って何の事?」

  ロン「お前がヘマやって例の石をなくしたときの話だよ。オレ達が危険を顧みず、お前のために危険な惑星にまで

  石を取り戻しに行ってやったんだからな!」

  ミツオ「あぁ!すっごく感謝してるよ!でも、よくよく考えれば、その石のせいで今こんなことになってるんだよね・・・。」

  ソロ「おしゃべりしてる場合じゃないぞ。ほら、もう着いたんだ。」

  その言葉を聞いて、ミツオとロンは顔を上げた。

  見ると、大きな火山が目の前に聳えていた。近くで見ると、その大きさとゴツゴツとした岩山の険しさに驚かされる。

  ドラゴンの呻き声が共鳴している。

  ソロ「この火山の麓には沢山の岩山があるんだが、そこを通り抜けて、マグマのごく近くまで行ったところに

  ドラゴンが住んでいると言われている。ほら、この洞窟に入るんだ。」

  ソロが指した先には、自然に出来たと思われる洞窟があった。

  彼は躊躇いもせず、その中へと進んでいく。三人も慌てて、後を追った。

  ロン「あのさ、ソロ。オレたちよく解らないまま、ここまで来ちゃったわけだけど・・・、ドラゴンって何なんだ?」

  洞窟の中は暗かった。

  隣の人の顔がやっと見える程度で、奥の方まで見渡せない。わずかなヒカリゴケが、道を少し照らすだけだった。

  ソロは振り返りもせず応える。

  ソロ「オレもよくわからない。実際に見たことはないからな。ただ・・・伝説によれば、凶暴なドラゴンはたくましい巨体

  で、強靱な翼で竜巻のような強風を起こすらしい。」

  ミツオ「火とか、はいたりするのかな?」

  ソロ「さっきも言ったとおり、見たことがないんだから知らないよ。ただ、普通の人間はとても敵わないだろうという

  話だ。」

  それを聞いて、三人は恐怖のあまり身震いがした。

  フェリオ「負けたら・・・死ぬのかな?」

  ソロ「まぁ、伝説のような強さだったら死ぬだろうな。」

  ロン「・・・断定するなよ。」

  仲間が人質に取られたことに焦るばかりで、後先のことなど考えていなかったが、もしかしたら大変な約束を

  してしまったのではないかと感じた。

  ― でも・・・、ぼくたちが何とかしなくちゃ、女の子はドラゴンに・・・。結局はやるしかなかったんだ。

  ソロ「火山の噴火とともに村に降りてきたドラゴンは、翼で強風を起こし、村を壊滅させたんだ。村人達は全員、

  遠くに飛ばされ、噴火がおさまった頃に村に帰ってみると、マグマで全てが焼きただれ失われていた。」

  暗くてよく見えないが、狭い洞窟なのだろう。静かな空間に、ソロの声だけが淡々と響いた。

  ソロ「オレはこの村をまとめる長の息子。今まで伝説の教えを守り、ドラゴンを怒らせないよう、十分に気をつけながら

  暮らしてきたんだ。・・・こうなってしまったからには仲間は絶対に守る。お前らだって、あの女どもを助けたいだろう。」

  ロン「・・・当たり前だ。」

  ソロ「なら、命を張れ。伝説のドラゴンがどんな怪物でも恐れるな。仲間のために、自らの恐怖に打ち勝つことだ。」

  ミツオはソロの姿を思い出していた。

  彼は自分達よりも確かに小さかった。また、12、3歳といったところだろうか。

  それなのに・・・。

  ミツオ「ソロは、勇気があるなぁ。責任感もあるし。まだ小さいのに偉いね。」  

  ソロ「ちっ小さい!?何を言う!見くびるな!長の息子として、当たり前のことをしているだけだ!」

  初めてソロの取り乱したような声が洞窟に響いた。ロンとフェリオも思わず笑い声を上げる。

  その時だった。

  突然地面が大きく揺らぎ、ゴゴゴゴゴ・・・―という音が響いた。

  フェリオ「じ、地震!?」

  ソロ「・・・多分、噴火が近いのだろう。ドラゴンが相当怒っているということだ。」

  皆が動揺する中、ソロだけは落ち着いた声で言った。

  ロン「お・・・おっかねぇな・・・。これもフェリオが着陸に失敗したせいだな・・・。」

  フェリオ「ご・・・ごめん。」

  しばらくして揺れはおさまったが、彼らの緊張感がより高まった。

  ただでさえ暗い洞窟の中・・・心臓が高鳴る。ロンの頬に冷や汗が流れた。

  ― 待ってろ、必ず助けてやるからな・・・みんな。

 

 

  ラナ「ねぇ、今のあの火山よね?やっぱり、もうすぐ噴火するんじゃ・・・。ミツオくんたちが危ないわよ!」

  つるされたままのルーシャ、ソフィ、ラナはけたたましい音が響いた火山を眺めていた。

  ルーシャ「あたし達、ドラゴンに食べられるのかもしれないのよね・・・。ねぇ、食べられる時ってどんな気持ちかしら?」

  ソフィ「食べられるときの心配をするより、ミツオさん達の無事を祈りましょうよ・・・。」

  ずっとつるされたままで、手足が痛くなってきた。抵抗することもできない。

  ただ、祈るしかなかった。

  ラナ「お腹空いたわ〜・・・。このままじゃドラゴンの餌になる前に餓死しちゃう。」

  ルーシャ「でも、こんな状態じゃ食べ物なんて・・・。」

  「あの・・・良かったら。」

  突然の声に、三人は顔を上げた。見ると、目の前に一人の女性が立っている。彼女達よりも少し年上であろうか。

  黒いロングヘアを揺らし、彼女はニコッと笑った。

  その顔は何となく誰かと似ている。

  「果物があるので食べますか?お口に合うか、わかりませんが・・・。」

  優しそうに微笑む彼女の手には、三つの果物が握られていた。

  「私はポポ。ソロの姉です。私は父に、あなた方三人を見張るように言われて来ました。」

  果物を小さく切って、ポポはラナやルーシャに口に入れた。

  その果物は甘酸っぱく、甘味が口の中いっぱいに広がる。

  ルーシャ「何コレ美味しい!宇宙には、こんなに美味しい果物があるのね〜。」

  原住民たちはそれぞれの家に引き上げたのか、今、外にはほとんど人がいない。三人と、ポポだけだ。

  ソフィ「ソロさんのお姉さん・・・。言われてみれば、どことなく似ていますね。」

  ― 性格は正反対だけど。

  ポポ「ソロが失礼なことを言って、ごめんなさい。ドラゴンに人質を差し出せば怒りは鎮まるなんて・・・それ以外にも

  何か方法はあるはずだわ。でも、許してあげてください。あの子は、ただ仲間を守りたくて必死なんです。」

  彼女は申し訳なさそうな顔をして言った。

  ポポ「ソロは仲間のためなら命を顧みない。今も父を出し抜いて、みんなのリーダー気取りで・・・責任感は強いんです

  けどね。だから大丈夫。きっと、皆さんの仲間と一緒に、何とかしてくれるはずです。」

  するとソフィも微笑んだ。

  ソフィ「私の友達も、とっても勇気があるんですよ。私は三人を信じているんです。」

  火山が再び火を噴いた。揺れる地面、ドラゴンの鳴き声。

  ― きっと、きっと大丈夫ですよね・・・。無事でいて、ミツオさん・・・。

   

 

  

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