LIKE A SHOOTING STAR                    

          ミツオ留学後の世界を描いた、連載ストーリーです。

 

 17、謎の美少女

 

   「この辺りね・・・。」

   少女は顔を上げた。

   小さな円盤の上に乗り、目の前に広がる大きな惑星・・・バード星を見上げた。

   彼女の服は、真空の宇宙空間にも適応しているため、円盤の外に出ても平気なのだ。

   手に持たれた、何かのレーダーのようなものが、大きな反応を見せている。

   「アレに最近、接触した可能性のある人物は・・・。」

   鋭く光った瞳がとらえたのは、青いブルーホール。人工的に造られたもののようだ。

   「許せない・・・必ず、敵をとってみせる。かつて母星に生きた、50億以上もの尊い命。そして、また・・・。」

   あの愛しい日々を・・・。

   彼女が足下を蹴ると同時に、ピンクのロングヘアが宇宙空間に揺れた。

 

1、  

 

       懐かしき・・・ミネルダの空!

   ミツオ「たっだいまー!」

   と、言うほど留守にしていたわけではないが。

   ミツオは声を張り上げて、勢いよくPBハウスのドアを開けた。ロン達も後から続く。

   休暇を利用してのスペースランドへの旅行。とんでもないアクシデントも多々あったが、ミツオ達には

   忘れることのできない思い出の一つとして、印象深く心に刻まれた日々だった。

   エディは自家用ロケットで彼らをミネルダまで送り、先ほど自分の担当惑星へと帰って行った。

   ルーシャ「ミツオくんったら元気ねぇ。あたしは、ちょっと疲れちゃったし休みたいなぁ。」

   ロン「それにしても、エディのホテルに泊まったあとでの、この質素なPBハウスの部屋・・・。

   ロットは大企業なんだったら、少しでもバード星本部に寄付してくれたって、いいじゃないか、なぁ?」

   ロンが倒れ込んだソファは、ホテルのベッドに比べると、かたく感じた。

   ソフィ「でも良い旅行になりましたね。さぁ、休暇も明けましたし、早速いつも通りの任務に戻りますよ!」

   四人は「えぇ〜!」と声を合わせて、口を尖らせた。

   しかし。

   一瞬にして、皆の動きが止まった。いや・・・固まったというべきか。

   空気が冷たい。何だろう・・・このオーラは。言葉にし難いが、平たく言うと・・・嫌だ。

       ― バンッ!

   沈黙の空間に、PBハウスのドアが開く音が響いた。ミツオは固まった首を、何とか動かして横を見た。

   玄関の辺りが、太陽の光で光っている。

   そして・・・一人の少女の姿が。

   彼女は顔を上げると、スッとこちらに歩み寄ってきた。四人は息をのんだ。

   少女はミツオの前まで来ると、足を止めて、ミツオを見下ろした。

   顔立ちが整った、美少女だ。小顔だし、鼻筋も通っている。

   彼女のピンクのロングヘアが揺れる。強い光を帯びた瞳に見つめられ、ミツオはしばらく声が出なかった。

   「あなた・・・。」

   その口から、透き通った、しかしハッキリとした言葉が発せられた。

   歳はミツオたちとそう変わらないだろう。なのに・・・この子が持つ、この迫力は何なんだろう。

   「アレを知っているでしょう?どこへやったの。」

   ミツオ「あ・・・アレって・・・?」

   彼は何とか言葉を絞り出した。彼女が見にまとっている衣装は、かなり科学の発展した文明を思わせるが、

   バード星のものではない。見たことがない素材で出来ている。

   「アリシウスの石・・・いえ、黄金に光る石があるでしょ。計り知れないパワーを秘めた・・・。

   大きさは・・・今は手の平に乗るくらいだと思うけど。」

   ミツオ「え・・・?」

   ソフィ「あれ・・・じゃないですか?」

   少女はソフィの方に顔を向けた。ソフィはビクッとしたが、一つ深呼吸をして続ける。

   ソフィ「前、ミツオさんが危険地帯の星に落として大問題になったじゃないですか。手の平に乗るようなサイズだけど、

   セレナさんが、とんでもない力があると・・・今、バード星で研究されている、あの石・・・。」

   「きっと、それだわ。」

   少女は目を開いて、ソフィに歩み寄った。

   「それは今、どこにあるの?バード星って、ここの外にある、あの青い大きな惑星?詳しく教えて。」

   ソフィ「そ、それは・・・。」

   ロン「中央都市にある、バード星本部じゃないかな・・・総監が持って行ったし・・・。」

   彼の震えた声を聞いて、少女は小さくうなずくと、再びドアを開けて、ハウスを出て行った。

   四人は安心し、思わず体の力が抜けた。

   ミツオ「はぁ・・・、何だったんだろう、今の子。」

   彼は額にたまった汗を手でぬぐう。

   ソフィは難しそうな顔をしていたが、ソファにもたれかかっていたロンに顔を向けた。

   ソフィ「ロン・・・まずかったかもしれませんよ。」

   ロン「え・・・?何が?」

   ソフィ「あの子が何者かはわかりませんが、何だか危険な香りがします。彼女は何が目的で、あの石を探しているので

   しょう?場所を教えない方が良かったような・・・。」

   ロンはハッと気付いた。

   ロン「で、でも・・・、答えないと、ただじゃ済まなかったかもしれないじゃないか。見ただろ?腰に付けた、沢山の

   怪しげな機械・・・。」

   旅行での楽しかった気分が、一瞬にしてしぼんだ気がした。

 

   「ここかしら。」

   空まで届くような、高層建築の建物。

   ここはバード星の中央都市・・・、そして本部の目の前だ。彼女は腰に付けていたレーダーを外し、

   その充分な反応に、うなずいた。

   スッと少女の足が地面から離れ、建物の壁に沿って上昇していく。

   ピコーン、ピコーン、ピコーン・・・―

   「反応がさらに強くなったわね。」

   彼女はその階の窓ガラスに触れた。鍵はかかっていなかったので、簡単に開いた。

   ここは休憩所だろうか。机の上に、お茶やお菓子が食べかけのまま放置されていたが、人影は見当たらない。

   少女は窓から部屋に入ると、レーダーの反応を頼りに、部屋を出た。

   人気の無い廊下を歩き、ある一室の前で立ち止まった。

   『研究室 関係者以外立ち入り禁止』

   そう書かれているドアをそっと開き、中を見渡した。暗くて先の方までよく見えないが、かなり広い。

   大規模な機械が、あちらこちらで音を立てていた。

   「ここのどこかにアレが・・・。」

   すると、すぐ少女の目にアレが留まった。

   部屋の中央付近に、金色の光が見える。力強く、神秘的で・・・また、何か言いたげなような。

   床、天井から伸びた三角錐の機械に挟まれるように。

   黄金に光り輝く一つのストーンが存在していた。

   「もう・・・、こんな大きさに。」

   

   ロリーナ「どう、そっち終わった?」

   セレナ「もうすぐです。それにしても、あの石の力は予想以上ですね・・・。この実験が成功すれば、バード星の

   大いなる発展と、宇宙の平和は約束されたも同然ですよ。」

   暗闇に、二人の女性の声が響く。

   セレナ「これでオーケーです。さぁ、早速試してみましょう。」

   ロリーナ「・・・待って。」

   ロリーナはスッと手を出し、ストーンに近づこうとしたセレナを止めた。ロリーナが険しい顔を浮かべ、

   暗闇の先を見ている。

   セレナも不思議に思って、そちらに目を向けると、暗い空間に一つの人影が見えた。

   それはそっとストーンに手を触れようとする。

   ロリーナ「待ちなさい。」

   ビクッと人影が揺れた。ロングヘアを揺らして振り向いたその少女に、二人とも見覚えがなかった。

   ロリーナ「何をやってるの?ここは、関係者以外は立ち入り禁止よ。」

   「・・・・返しなさい。」

   少女は口を開いた。

   「この石はもともと私の星のものよ。返してもらうわ。」

   ロリーナ「あなたのもの?あれは私達、バード星調査隊が無人の惑星で発見したのよ。それに、あの石には今、

   全科学界の期待がかかっている。私の独自の判断で、渡すわけにはいかないわ。」

   「・・・そう。」

   彼女は閉じていた目をカッと開き、腰に手を伸ばして銃のようなものをロリーナに向けた。

   「ならば、悪いけど力尽くで奪い取るまでよ・・・!」

   ― パァンッ!

   セレナは思わず目を瞑る。弾丸は二人を外れて、研究室の壁に大きな穴を開けた。

   ロリーナは慌てて、壁のスイッチを押した。

   すると、少女の真上の天井が開き、ガシャンッと彼女の上に檻が降りてきた。

   「なっ・・・!」

   彼女が同様している間に、檻は床をすり抜けて建物を降下していき、やがて最下階まで来ると止まった。

   相変わらず暗い部屋の中。見渡すと、中は空だが、他にも同じような檻が沢山設置してあった。

   「・・・こんなことしたって無駄よ。」

   彼女は落ち着きを取り戻し、笑みを浮かべた。そして、腰に手を伸ばす。

   そのときの一瞬、少女の腰の周りがピカアアアアと黄色に光った。

   「あら・・・なに・・・どうして。」

   少女が腰のスイッチを押しても、何も起こらない。

   「そうか!アイツ・・・ッ!」

   彼女は鉄格子をつかむと、足で思い切り床を鳴らした。

  

   セレナ「ロリーナさん、さっきの子何だったんでしょうね・・・。」

   ロリーナ「わからないけど、あの銃の威力。ただ者ではないわね。」

   彼女は壁に開いた、大きな穴を見た。あの弾丸が当たったら、ひとたまりもなかっただろう。

   ― あれは、単に少女の狙いが外れただけなの?それとも・・・。

   ロリーナ「とにかく、後で詳しく取り調べてもらわないと。」

 

 2、

 

   3号「無事に強盗が捕まってよかったわね。」

   地球の日本国―東京。

   空の上で、ブービー、パー子、パーヤンがずっと追っていた強盗の逮捕を祝していた。

   4号「よっしゃぁ、さっさと帰って昼ご飯食べるで!」

   2号「うぃうぃ!」

   3号「そうねっ。あたしも・・・。」

   ドラマの撮影に戻らないと。

   彼女がふいに地上を見下ろすと、公園の草の茂みが目に留まった。ガサガサと、不自然に動いている。

   そして、そこから、いつものあの・・・嫌な視線が。彼女の背筋がゾクッとなった。

   パー子は帰ろうとする、ブービーとパーヤンのマントを、背後から力強く引っ張る。

   4号「痛ったぁぁ!パー子はん、何すんねん!」

   パーヤンの首が、6600倍の力で締め付けられた。

   3号「シッ。ほら、例の視線を感じるわ・・・。きっと犯人は、真下の公園の草陰にいる。」

   2号「ウキャー?」

   3号「ダメッ。ブービー、下を見ないで。気付かないふりをするのよ。」

   ハッとなったブービーとパーヤンは、わざとおどけたように口笛を吹きながら、視線だけを公園に向けた。

   ブランコの後ろの茂みが、確かに揺れている。

   3号「ねぇ、今日こそ怪しい視線の正体を暴きましょうよ。いつでもどこでも感じるものだから、ここ数日落ち着いてい

   られないんだから。」

   4号「そうやな。3方向から、挟みうちして捕らえるで。」

   二人はうなずいた。

   

   「パーマン達は、今日も手を振って別れていった・・・と。」

   例の茂みに近づくと、ボソボソと小さな声が聞こえてきた。

   パー子は息を潜める。草の中に、確かに誰かがいる。この角度からではハッキリ見えないが、声から判断して

   成人男性のものだろう。

   ― ストーカーさん・・・覚悟なさい!

   4号『行くで!』

   バッヂからのパーヤンの合図と同時に、パーマン達は男に飛びかかった。

   「うわあああっ、なんだぁ!」

   無様な声とともに、茂みから顔を出したのは、全く見覚えの無い男性だった。

   肩まで届く黒髪に、クッキリとした瞳と眉。それにしても、異様なのはこの格好だ。

   地球では未来世界のアニメに登場しそうな、白く長い裾の衣装に、手にはペンとメモ帳。

   三人は目を見開いた。

   3号「こ・・・これが、ストーカーの正体?」

   2号「ウキャァ・・・。」

   ストーカー・・・。

   その言葉を聞いた男は、思わず自分に乗っかったパーマンを払い除け、立ち上がった。

   「ストーカーとは失礼だなぁ!僕はバード星から派遣された調査員、アルド・レヴィン。

   数日前から君たちの、活動の様子を調査しに来てるんだ。」

   ちょ・・・!

   「調査員っ!?」

   三人の声が重なった。

 

   「えっ!?そうか・・・、純粋に調査をしているだけのつもりだったのに、君たちには、

   そんな風に怪しまれてたんだな!」

   彼らは一目につかないよう、空高くに移動した。

   彼は声を上げて笑った。かなり気さくな人のようだ。

   3号「アルドさん、もしかして何年か前にも、地球に調査にいらしたことはありますか?」

   アルド「あるねぇ、君たちがまだパーマンになって間もない頃だったかなぁ。」

   パーヤンとブービーも納得したように、うなずいた。

   4号「それにしても、バードマンはんが何にも言ってくれへんから、こんな事になったんや。」

   アルド「あぁ、君たちのバードマンは今忙しいからね。」

   そう彼は楽天的に笑う。パー子達は、すぐに親近感を覚えてしまった。

   同時に、自分たちのバードマンもこんな人が良かった、と思った。

   アルド「でも本音を言うとね、今回は地球観光メインで来たんだ。自分の中では。僕はこの地球が好きなんだよ。」

   3号「地球が?どうしてですか?」

   アルド「うーん、そうだね。」

   彼は下界を見下ろした。

   アルド「この木造建築。今の宇宙では珍しい。それに何と言うかな・・・雰囲気も含めて、ぼくの母星に似ているんだ。

   特にここ、日本がね。」

   3号「木造建築なら、東京よりも京都の方が見所多いんじゃないかしら?」

   アルド「きょうと?」

   彼はパー子の言葉にすぐ反応した。

   アルド「行きたい!どこにあるんだ?」

   3号「どこって・・・ずっと西の方ですよ。パータッチして行かないと。」

   アルド「あぁ、それなら大丈夫。小型テレポート機器を持ってきたからね。」

   3号「それなら案内しますよ!」

   パー子が笑うと、アルドも楽しそうに微笑んだ。

   アルド「ホントかい!是非、お願いするよ。」

   3号「ブービーとパーヤンはどうする?」

   彼女は振り向いた。

   4号「わいは昼食の後、パーヤン運送の仕事もあるでなぁ。今日のところは、遠慮しますねん。」

   2号「ウイウイ〜。」

   3号「そう?気を付けてね。さぁ、アルドさん!」

   アルドは笑って、うなずいた。

 

   3号「京都−!」

   あっという間に、京都の清水寺。流石、テレポートとなれば一瞬だ。

   パー子は久しぶりに来た、清水の舞台に胸を躍らせている。

   アルド「わぁっ、凄いな!懐かしいよ。この木の香りに、何とも言えない風情を感じるね。」

   3号「京都の名所の一つ、清水寺ですよ。」

   パー子は近くの店で八つ橋を一箱買うと、アルドに手渡して、ベンチに招いた。

   そよそよと風が気持ち良い。日本の文化に触れると、パー子は不思議と落ち着いた気分になれるのだ。

   3号「アルドさん。さっき出身星と地球が似ていると言ってましたが、アルドさんの星はどんな星なんですか?」

   彼女は八つ橋を食べながら、彼に尋ねた。

   アルド「そうだね。こういう木造建築が主流なんだ。僕は調査以外でも、何度も観光にこの地球を訪れているんだよ。 

   実は、バード星が造りだした架空宇宙に、地球と似せた星を造ったこともある。 

   ここに来ると・・・遠い母星のことを思い出して、落ち着くんだ。」

   そういう彼は感傷的になっていた。

   アルド「でも、もう無いんだよ。」

   3号「え・・・?」

   パー子は思わず、八つ橋を食べる手を止めて、彼の方を見た。

   アルド「僕がバード星に留学している間にね・・・。核ミサイルの誤射で、あっという間に星の全てが灰と化したらしい。

   愚かだよね。自分たちの手で、自分たちの星を滅ぼしたんだよ。」

   それを聞いて、パー子はビクッとした。核ミサイル・・・。

   アルド「君たちの星もそうらしいね。多くの国が、核兵器を隠し持っていて、今この瞬間にも大戦争がはじまるかも

   しれない。僕らがこのお菓子を食べ終わる頃には、地球はもう無いかもしれない。

   その点でも、二つの星は似ているね。」

   3号「・・・・。」

   パー子は何も言えなくなった。

   ― アルドさんには、もう・・・身寄りが一人もいないのね・・・。

   家族も、友達も。帰る場所も・・・自分が知らない間に、全てを失ってしまったのだ。

   それは、この地球に関しても、確かに他人事ではなかった。

   不安そうな彼女に気付いて、アルドは話題を変えようと、パー子の首にかかった

   ロケットに視線を移した。

   アルド「それ、中に写真が入るペンダントかな?君の大切な人でしょ。誰が入ってるの?」

   3号「え・・・!?」

   アルドはからかうように笑って、パー子を見ている。彼女は赤面しながらも、ロケットを外して中を見せた。

   3号「あたしの大好きな人です。今はバード星に留学しているんですよ、須羽ミツ夫っていう。ご存じですか?」

   彼はミツ夫の写真を覗き込んだが、首をひねった。

   アルド「ミツオ?うーん・・・どうだろ、わからないな。でも、会ったら声をかけてみようかな。」

   パー子はクスクスと笑った。それを見て、アルドは安心する。

   アルド「僕にもね、大切な恋人がいるんだよ。でも、最近まで消息がわからなかった。宇宙の危険地帯と呼ばれる星に

   調査に出かけたきり、帰ってこなかったんだ。」

   3号「それじゃ、アルドさん、凄く心配したでしょ・・・?」

   アルド「あぁ、何度僕が迎えに行くと言っても、危険だから。これ以上、あの星に送り込んで犠牲者を出すわけには

   いかないからって、断られたよ。でも諦めなかった。とうとう、自分のロケットで飛び立とうとした、その時!」

   彼の声が弾むように、明るくなった。

   アルド「帰ってきたんだよ。生き残っていたのは、彼女たった一人だった。でも、これは運命だと思った。」

   パー子の顔にも、笑顔の花が咲いた。

   アルド「君も、彼になかなか会えなくて寂しい時もあるだろうけど・・・。でも、いつかまた絶対に会える。

   二人が運命の糸で、繋がっていればね。」

   3号「運命の糸・・・か。」

   パー子はロケットを手で優しく包み込み、空を見あげた。

   ― ミツ夫さんは今、何をしているんだろう。いつ帰ってくるの?

   バード星は遠い。どんなに頑張っても、自分から彼のもとに行くことはできない。

   でも・・・運命の糸が存在するなら、例え離れていても、ずっと繋がっているのだ。

   ― ・・・いつだって、いつまでだって。あたしは、あなたを想って、あなたの帰りを待っているわ。

      アルド「そうだ、ちょっと相談に乗ってもらってもいいかな?」

   3号「はい、あたしに出来ることなら何でも。」

   すると彼は、照れくさそうに頬をかいた。

   アルド「バード星に帰ったら、さっき話した大切な人にさ・・・、その、プロポーズしようと思うんだ。良い店を知らないか?

   ぼくの大好きな、地球の指輪を渡したいんだ。」

   3号「・・・・。」

   それを聞いて、パー子は満面の笑みを浮かべた。

   3号「はいっ!」

 

 3、

   

   ミツオ「かっこいい!これを付けると、パーマンマスクも、戦隊もののヒーローのように見えるよ!」

   ミツオのパーマンマスク後頭部には、黄金に光る石と、それを取り付けるための、角張ったケース。

   このケースの留め金は、どんなところにも密着することができるのだ。

   ロン「いいなぁ!次、オレに貸してくれよ!」

   ここは架空宇宙の中の、小さな無人星。大気もなく、ゴツゴツした岩しか無いが、

   PBの制服は真空にも対応しているため、そのまま宇宙船の外に出ても大丈夫なのだ。

   今、ソフィ班はロリーナに誘われて、ストーンに秘められた力の威力を調べる、実験をしに来ている。

   セレナ「こっち準備終わりました。」

   セレナは大きな機械を地面に設置した。それを聞いて、ロリーナはうなずく。

   ロリーナ「ミツオくん、その石を一先ず外して、通常のパーマンパワーで岩を壊してくれる?」

   そう言って、彼女は機械のスイッチを押した。すると、地面に散らばっていた石がみるみるうちに集まっていき、

   一つの巨石が現れた。

   ルーシャ「す、すごい!」

   ソフィ「セレナさんはロリーナさんと一緒に、その石の研究をなさってるんですか?」

   セレナ「私は生態学者なんだけど、興味があってね。ロリーナ先輩も、私と同じ動機よ。」

   ルーシャ「ロリーナさんって、セレナさんの先輩なんだ・・・。」

   ミツオは石を外すと、パー着したまま、その岩に思い切りこぶしをぶつけた。

   力は入ったが、岩はガラガラと崩れ落ちた。

   ロリーナ「オーケー。じゃぁ、次はこれね。」

   彼女が今度作った巨石を、ミツオは力いっぱいこぶしで叩いたが、痛感が走っただけで、ビクともしなかった。

   ミツオ「いたたたたた・・・!む、無理だよ、こんなにかたいのっ!」

   ロリーナ「そうね。さっきの岩の、数百倍のかたさにしてるもの。でも、あの石を付けてみたらどう?」

   そう言われて、ミツオはケースを取り付けた。すると、岩に触れてちょっと押しただけで、

   何とも簡単にそれは崩れ落ちた。

   ミツオ「え・・・っ!全然、力入れてなかったのに・・・。」

   ロリーナ「上出来だわ。」

   彼女はニコッと微笑んだ。

   ロン「すごーい!なぁ、ミツオ!次、オレ!オレにも、やらせてくれよっ。」

   ミツオ「わかった、わかった。ほら、どーぞ。」

   ロンはミツオから、石の組み込まれたケースを受けとると、自分もパー着してマスクに取り付けた。

   セレナに岩を出してもらうと、彼は軽々とそれを持ち上げる。

   ロン「見ろよ、見ろよ!オレ、今ならどんな悪役が来ても、負ける気がしないぜ。」

   ルーシャ「はいはい、わかったわかった!ねぇ、あたしにも貸してよ。」

   ロン「何だよ、まだ何にもやってないのに!」

   ルーシャがロンからストーンを取り上げようとして、彼の体を少し手前に押し出した。

   ロン「わっ・・・ちょっと!」

   体がバランスを崩し、ロンは倒れるように前方に傾いた。

   その時ロンが持っていた巨石が、その勢いで手から飛び出し、近くの惑星に隕石となって

   もの凄い勢いで衝突したのだ。

   火柱が立ったと思ったら、炎が広がり、それは小さな惑星をあっという間に火の海にするには十分だった。

   誰もが唖然とした。

   一つの惑星が、思いがけず最期の時を迎えたのだった・・・―

   ロン「そ・・・、そんな馬鹿な・・・。」

   彼は地面に突っ伏した状態から少しだけ顔を上げ、瞳を大きく見開きながら、目の前の光景を見つめていた。

   ロン「そんな、そんなつもりじゃなかったのに!どうしよう・・・っ!」

   ロリーナ「大丈夫、ロンくん落ち着いて。あの星は、幸い誰も住んでいない無人星よ。」

   それでもロンはうつむいたまま小刻みに揺れていた。ミツオがそっと駆け寄って、背中に触れる。

   ― 少し倒れただけの勢いで・・・、あっという間に星を壊滅させてしまうなんて。

   ルーシャとソフィも、驚きのあまり立ちすくんでいた。

   ロン「宇宙を平和にするって約束しておきながら、何でこんなことに・・・。」

   ルーシャ「ご、ごめん・・・。あたしがロンを押したのがいけなかったのよ。」

   ミツオ「無人星だもん。気に病むことないって・・・。」

   そう励ましながらも、ミツオにもロンの気持ちが痛いほど伝わってきた。

   ロリーナはロンのマスクからケースを取ると、再び火の惑星に目を向けた。焼け落ちていく、小さな星・・・。

   それは月くらいの大きさであったが、

   予想以上の石の威力に、ロリーナも驚きと動揺を隠せなかった。

   ― もう一度、調べ直して・・・取り扱いには十分な注意が必要ね。

   燃える星を目の前に、六人はずっと立ち尽くしていた。

 

 

   ― 人間なんか、嫌いだよ。

   ミツオ「ここ・・・どこ?何だか、周りがぼんやりと黄色く光っている・・・天も地もないよ。」

   ― 人間ほど馬鹿で、醜くて・・・愚かな生物はいないね。

   ミツオ「どこにいるの?君は・・・誰?」

   ― そうだなぁ。やがては、この宇宙を支配するもの・・・かな。

   ミツオ「支配・・・?よくわからないなぁ。どうして、そんなに人間を嫌ってるの?」

   ― 奴らは自分のことしか考えない。他人がどうなったって、知ったことじゃないって顔だよ。

   ミツオ「そうかな?人間にも、いい奴はいっぱいいるよ。」

   ― 利用するだけ利用して、あとはポイッさ。最期になって、やっと自分の愚かさに気が付く。

   ミツオ「うーん・・・、まぁそういう人も少なからずいるよ。自分で自分を滅びの道に追いやっていることに

   気が付かないんだ。」

   ― そうさ。だから、そういう奴らは、さっさと滅びてしまえばいいと思う。

   ミツオ「君・・・そんなにも人間が嫌いなら、どうして、ぼくに話しかけたの?ぼくだって、人間だよ。」

   ― ・・・・あぁ、そうだっけ。でも、君は特別だよ。ぼくは君が気に入った。

   ミツオ「え・・・?どうして?」

   ― 自分でもよくわからない。どうしてだろうなぁ・・・、君だけは悪い奴じゃないって思えるんだ。

   ミツオ「それは嬉しいよ。じゃぁ、他の仲間も信じてあげて?嫌いだなんて言わないでよ。」

   ― それは無理だよ。ぼくは、人間の恐ろしさを嫌というほど知ってしまった。もう・・・辛い思いはしたくない。

   ミツオ「・・・色々あったんだね。」

   ― まぁね。ごめんよ、ぼくの話に付き合わせちゃって。

   ミツオ「いいよ、またいつでも呼んでよ。」

   ― うん。ぼくは、また君と話がしたい。また会おう。その時まで。

   ミツオ「そうだね、その時まで・・・。」

 

     

 

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